るんみゃ

1 件の小説
Profile picture

るんみゃ

私の方が

私(菜奈)には小学1年生の時から好きだった子がいる。優太という、優しく面白い男子。そんな優太がずっと大好きだった。 私は優太が大好きなまま中学に上がった。中学には当たり前に初対面の人ばかりだ。まずは第一印象を良くするため、優しく振舞った。自然に素の自分に戻していけば問題ないだろう。そう思いながら。部活だって順調だった。仲のいい友達ができた。華那という優しく、気配りができる子だ。そんな華那といるのがとっても楽しかった。もちろん恋愛の話だってした。そんな華那といつも通り学校を出て話しているときだった。 「私さ、菜奈には申し訳ないけど優太のこと好きになっちゃったかもしれない。」 と、華那はニコニコしながら話すのだった。このままだと取られてしまう。そういった不安、または怒りにも近いと言えるだろうか…が私を追い詰めた。 それから数日がたったある日。席替えがあったのだ。決め方は、それぞれの班の班長がバランスを見ながら席を決めるのだった。このクラスで最後の席替えだった。幸い、華那と同じ班だったのだ。私は1番後ろの列の席、私の前に華那という並びだった。喜んだのもつかの間、華那が班長だということを知った。嫌な予感がした。どうにかこの予感だけは当たらないように願った。次の瞬間。 (的中してしまった…) そう。華那の前に優太がいたのだ。あとから華那に聞いたら、「班長の特権」だと言う。 (華那、私が優太のこと好きだっていうの忘れてない…?) でも私はそんな考えすぐに消した。優太は私のものじゃない。告白すらしていないんだから。そんな慌てた自分を宥める自分の考え方を、我ながら最低だと思う。「私の方が優太のことを知っている。」こんな言葉で何が変わるのか疑問を持つほど自分でも分からなかった。ただ、とっさに思い浮かんだ言葉だった。 席替えをして何日かたった頃。私と華那は教室に行くため、階段を登っていた。その日は朝からテンションが下がった。 「私、優太と毎日おやすみのLINEしてるんだよ!?やばくない!?」 華那が言ってきた。リアクションに困る。華那が言うに、怪我の心配のLINEを送って、そのままおやすみのLINEを送った時から毎日してるそうだ。私だって怪我の心配のLINEくらいしたことがある。おやすみは…1度もない。単刀直入に言えば悔しかった。それだけだ。 「まじぃ!?すご…w」 私はこの気持ちが伝わらないように、でも話に興味を持っていることを伝えるように、言葉を選んで応えた。席替えをしてから、華那と優太の距離は縮まったように見えた。話すのすら嫌になるほど華那のことを嫌いになってしまったらどうしよう。そんなことを考えながらその日はぼーっとしているつもりだった。 その日の放課後のことだ。部活が終わり、2人で歩いていると、 「優太は私の事好きかなぁ…」 と、華那が呟いた。そんなこと言わないでくれ。私は言葉を必死に選んだ。 「どうだろうね…」 表情を作れているかすら曖昧だった。素っ気ない返事になってはいないだろうか。 「恋はいいよね。毎日が楽しい。」 はっとした。華那は私のことなんかライバルとすら思っていないんじゃないか。ただの友達。そうだ。私だってずっとそんな関係でいたい。 「そうだね」 またも素っ気ない返事になってしまった。もう疲れた。が、何とか乗り切ろうと思った。その瞬間、私は確信した。ライバルとも思っていないこと。そもそも私の話なんか聞いていなかったのではないか。 「菜奈も恋した方がいいよ。」 憎かった…とまで言えるのではないだろうか。私の方が知ってる。優太が泣いている姿だって。優太が本気で怒った時だって。優太が小さい頃、口いっぱいにパンを詰め込んでいたことだって。華那より何倍も知っている。でも、それすら関係なく自分の恋をただただ純粋に楽しんでいる華那が…… (羨ましい) そう思えた自分は惨めだなとまで感じた。こんなことで張り合ったって誰にも伝わりやしないのに。 「うん」 ようやく絞り出して出た声だった。 そして。これは、人物名さえ変えているが私の実話である。「悔しい」という気持ちを抱えながら今日も学校へ行く。

0
0
私の方が