空
73 件の小説青に飛び込んで。
瞼の裏まで広がる 透き通った青色。 ぷくぷく泡を生みながら 体全部で青を感じるの。 全部解放して 青に流してもらうの。 嫌なことも 嬉しかったことも 全部全部忘れて 全部全部青に染めるの。 青は優しく私を包んで “大丈夫だよ” って言ってるみたいで。 青は優しく私を包んで “早く行こう” って言ってるみたいで。 青に体全部を預けるの。 私を青に染めて 青を私に染めて 私を消して 青の結晶に 青の宝石に 青の全部に 溺れるの。 青に飛び込んで 青に身を包んで 青を纏って 青に溺れるの。 青を抱きしめながら “青に飛び込むの”
水を溢すの
目からいっぱいの 水を溢すの。 バケツから溢れるくらいの 水を溢すの。 “うわーん。うわーん” って いっぱい泣いて いっぱい水を溢すの。 顔が真っ赤になるくらい 顔がくしゃくしゃになるくらい 顔が壊れるくらい 水を溢すの。 小さい手で いっぱいの水を拭き取るの。 “ダメ。泣いちゃダメ” って。 今までの事は無かったことにして 全部拭き取るの。 バケツいっぱいに入った水も 全部海に流して くしゃくしゃになった顔も 元に戻して 溢した水も 全部拭き取って。 でも やっぱり水を溢すの。 “うわーん。うわーん”って。 やっぱり 悲しみを抑えられないって。 みんなに逆らえないって。 やっぱり いっぱい泣いて いっぱい悲しんで いっぱい水を溢すの。 こも悲しみを拭き取るまで いっぱい “水を溢すの”
お遊び鬼ごっこ
6−突撃 そう悪の心が清佳を覆い尽くす。 操られていた体も林へとゆっくりと歩き出す。一歩ずつ。ゆっくりと。 林へ入ると予想通りに人が溢れていた。それも逃げる人ばかり。 1番近い位置にいる人をタッチするために手を伸ばす。 しかし,逃げる人たちは鬼が迫って来るのに気付いて,勢いよく逃げ出す。他の仲間を押し倒しながら。 でも清佳は決して足を止めなかった。 1番近い位置の人を無差別に狙う。 あと,ちょっと……! 転びそうになりながら逃げる人の背中に手を伸ばす。 「っ……!」 ……解放,された!体が自由になった!逃げる人になれたんだ! 清佳は前の人をギリギリでタッチし,鬼から解放された。 しかし,それはあの男の子だった。 密集したこの空間であの足の速さは封印されてしまったのだ。 男の子は勢い良く振り返ると,再び真っ黒に染まった目を向け清佳に突進する。男の子の足が私の足を踏み,2人は一緒に転んでしまった。まるで先程と入れ替わったよう。 あの男の子はこんな気持ちだったんだ。ヤバい……!逃げきれない。 私じゃ男の子のような身体能力はない。かといって男の子が離れてくれるわけでもない。本当に,今度は……。 整った顔が私の顔に少しずつ距離を縮める。無の表情だけどその中はさっきの私と同じ事を思ってるのかな? どうしよう。助けてほしいけどほおっておいてくれれば……。ダメダメダメ。何考えてるんだ。まだ何かここから抜け出す方法があるかもしれない。 「コラァ!ウチの清佳に何してくれとんねん!アァ!」 すると,どこからは不良のような喋り方をした誰かが近づいてくる。まさか,叶菜! なんだか複雑……。いやだからダメなんだってば。お願い,早く!もう……。 「プハァ!」 その瞬間,叶菜が男の子の腹を勢い良く殴る。男の子は吹き飛ばされ白目を向ける。 こんな叶菜がいたなんて……。恐ろしい。それより,お礼伝えなきゃ。 「ありがとう。叶菜。助かったよ。………え?」 パシッと一発叶菜が私の頬を叩くと私の顔をじっと見る。 そうだ。叶菜は鬼だった男の子に触れたから一度鬼になって,目の前にいた私をタッチしたんだ。……という事は,今は私が鬼だ。 前後は男の子と叶菜。どっちを選べば良いんだ。いや,選ぶと言う選択肢はないんだ。だから私の体がどっちを選ぶか。 一直線に向かったのは,目に一番最初に入ってきた叶菜だった。 でも,このままじゃ叶菜と私が鬼を変わるのをループするだけで,いずれどちらかが脱落してしまう。 こうなったら,一か八かで私が人が密集している場所へ叶菜を連れていって,他の人を犠牲にする方法しかないんだ。 そう決心した清佳は林に奥へと走っていく。ここで私が捕まってしまえばもう脱落してしまう。 現在タイマー1分を切っている。誰かの犠牲はあるんだから仕方ないの。 林の奥へとだどり着くと人が溢れかえっていた。 やった!人がまだ沢山いる。でもあの男の子も……。なんとかあの男の子だけは捕まらないようにしないと。 男の子の横を風を切るようにして抜けると,人が密集している場所へ突撃する。叶菜もついてきてる。 叶菜はその瞬間,一番近くにいた中学生くらいの女の子をタッチすると,急いでその場を離れる。 タイマーはもう10秒を切っている。このままいけば……! その時,女の子が目をつけたのはあの男の子だった。 女の子は男の子へ突進する。 しかし,男の子はまだその状況に気づいていなかった。もしここで鬼になってしまったら助かる確率は限りなく0に近い。 「ダメ!」 清佳がそう叫ぶと男の子は目を丸くさせる。 「避けて!」 叫び続けるも男の子は身動きを取れず固まったまま。 このままでは男の子が脱落してしまう。それだけは嫌だ! 清佳は頭を真っ白にさせたまま咄嗟にその場を離れる。 女の子はもう真後ろまで来ると手を伸ばす。 その瞬間清佳は男の子の手を引っ張る。もう,男の子を助けるのに無我夢中で。 その時会場にゲーム終了の笛が響いた。 男の子は無事助かったけどあの女の子は。でも誰かの犠牲はつきもの。仕方ない事。 というか,今これ……。 「ご,ごめん。急に」 慌てて清佳が謝ると照れた顔で男の子は呟いた。「ありがとう」と。 その顔は顔が真っ赤になりあの時とは違う可愛さだった。 すると,タイマーが0になった時鬼だった女の子の体が一瞬止まると,血狐の方へと歩いていく。 なんだか見たことのある動き。でもそれがわからない。 血狐の周りには狐の面を被ったあの子供たち。そいつらは脱落した人の頭目掛けて包丁を振り下ろす。死ぬまで滅茶苦茶に。 血が暴れているように飛び散っている。痛いなんて感情で収まるほどではないだろう。 すると,あの女の子が一瞬だけ清佳を睨む。自分がこうなったのはあなたのせいと言わんばかりに。 それでも,包丁には勝てずそのまま息を引き取った。 あんな目に私もあっていたかもしれないなんて。 少し一安心すると,血狐が拍手をする。 「第一ゲーム『変わり鬼』のクリアおめでとう!鬼13人が脱落して現在30人!次のゲームは,『氷鬼』だよ!」
お遊び鬼ごっこ
5−操り人形 会場のシンボルのような位置にあるタイマーは現在20分。それが0になった時鬼だった人が脱落する。 清佳たちは鬼の元へと駆けていく。 手を限界まで伸ばして今すぐにでも誰かにタッチしてもらえるように。 しかし,鬼は清佳たちに目もくれず一直線に目の前の人をタッチしていく。タッチされた人もまた別の人をタッチする。 清佳たちは鬼の死角にいたから。 そうして鬼が清佳たちの元から離れていってしまった。 しかし,そんな目にあったのは清佳と叶菜だけではなかった。 隣で座り込んでいる男の子は鬼の行き先をじっと見ている。年は清佳と同じくらいの小学5年か6年生。 まだ数秒しか経っていないのに,その男の子の額からは汗が吹き出していた。その汗を首元の裾で拭う姿はアニメの主人公のよう。 清佳がじっと男の子を見つめていると,澄んだ瞳で睨みつける。 そして鬼の元へと走っていった。その速さは異次元で恐ろしいほど美しかった。 「なに?一目惚れってやつ?」 叶菜がからかうように問いかける。 しかし否定は出来なかった。あの美しさは忘れられない。 ダメだ。今は“死”のゲーム中。清佳は頬を一叩きするとこのゲームに集中する。 現在タイマー18分20秒ほど。急いで鬼になって他の人に変わってもらわないと本当に危ない。 「行こ。本当に脱落するかもしれない」 「話逸らした。まぁ,正当なんだけど」 少し気軽そうに話す叶菜はあの最初の時とは別者だった。 2人は鬼がいる方へもう一度走り出すと額から汗が滲み出る。 「鬼見ーけっ」 叶菜が叶菜じゃないような目でそう言い放つ。『鬼』という言葉が脳内を埋め尽くしているよう。 急いで清佳も鬼の元へと走っていく。 あっ!あの男の子。 清佳の一番近い位置にはあの男の子。鬼になったようで今私が向かえば男の子が助かる確率は上がる。それに私も。 でも鬼を変わるにはボディータッチを……。 あー。また恥ずかしがっちゃって。今は“死”のゲーム中なの。生きるか死ぬかの戦い。こんな事思ってる暇があるならもっと早く走れ。 そんな清佳を見つけた男の子は今まで以上の主人公で向かって来る。あの澄んだ瞳は真っ黒に染まり,まるで何かに取り憑かれているよう。 2人はお互いの顔をじっと見つめたまま,手を限界まで伸ばして走る。止まれと言われても止まる事はできない速さで。 「っ!」 その瞬間一瞬だけ2人は手を繋ぐ。 鬼になった清佳と逃げになった男の子は。 恥ずかしさを抑えきれず清佳はその場を離れようとする。しかし体は言う事を聞かず,目の前にいる男の子へ突進する。 体が操られている。意識だけが清佳に残りそれ以外は何もかも失われた。まさに操り人形状態。 状況が理解できず清佳は操られるまま。このままだと。 少し清佳の胸が高鳴る。 男の子の頬も赤く染まる。目は真ん丸でさっきまでとは違い少し可愛い。 あぁ……。ダメだ。ダメなんだけど私には阻止できない。 2人の顔の距離が残りわずかになった時,清佳の視界は地面の砂で埋めつされた。 ギリギリのところで男の子がその2人のわずかな空間を抜け出したのだった。 これで良いんだ。良いんだけど……。 すると清佳の顔が男の子に目を向け,ロックオンする。 鬼になってしまった清佳は操り人形状態。意識だけが残っているので,体は操作できない。一度目にすると視界から隠れるまで追いかけ続ける。なんだかハンターになった気分。 そんな事よりこの足の速さはなんなの!私じゃないじゃない! 操られている清佳の体は,異次元の足の速さで男の子に向かっていく。 あの男の子の足の速さでもこの鬼の速さでは追いつかれてしまいそうなほど。 ものの数秒で清佳は男の子の背中に追いつく。その背中に清佳が手を伸ばした時,勢いよく男の子がカーブする。 その速さに追いつけなかった清佳の体は,止まる事なくつまずいてしまう。 その間に男の子は鬼を振り切り,清佳の視界からは消えた。 息が荒い。慣れない走り方で清佳の意識は吹き飛んでしまいそう。 現在タイマー10分30秒ほど。あと少しで半分を切る。 このままじゃ,私が脱落してしまうかもしれない。 どうしよう。どうしよう……。こんなところで私の人生を終わらせたくない。どんな方法でも良い。だから,生き残りたい。 精神的にも体力的にも追い詰められた清佳の目は殺意に満ちていた。真っ黒に染まり人の目とは言えるほどでは到底ない。 笑みを浮かべながら,清佳はゆっくりと立ち上がる。 真っ直ぐと前を見る。振り返る事はもうない。前を進むだけで良いんだ。 その先は,あの木々が集まった林だった。 “人がうじゃうじゃいる場所はあの場所しかないんだ……”
物語の始まり
ただひたすらに真っ白な風景が続いて 素敵な『文字』も与えられなくて 輝けなくて そんな『空白』として生きるのが 僕はもう嫌だ “『空白』だって輝いてるよ!” とか “『空白』がいたから僕たちは輝ける!” だとか 綺麗事を言っておけば良いってのが その『文字』に出ていた 何が輝いてるとか。僕がいない時のデメリットとか。全然教えてくれなかった ね? 別にさっきのままでも全然読めるでしょ それと反対 『文字』たちがいなきゃ 何も始まらない ただ僕の『空白』という風景が続いて 無駄な空間があるだけ 僕がいなくても 世界は成り立つ 僕の存在なんて ないのと等しい そんな僕のもとに 『物語』がやって来た 『文字』が集まった 『文章』という 素敵なものを持っている『物語』が 優しい声で教えてくれた “『空白』がいたから『物語』が始まる 段落って『空白』でしょ? 段落がなきゃそれは『物語』とは言わない ただの『文章』と等しい でもそこに『空白』が加わると 『物語』となる 『空白』がいるから『物語』がある ありがとう!” って その時初めて 必要とされたと知った 僕は『物語』の始まりなんだ 素敵な『文字』を与えられなくても 僕は『空白』という 一つの存在で 『物語の始り』だから
お遊び鬼ごっこ
4−第1ゲーム 建物内には人の血や死体が散乱し,あまりにも無惨な光景だった。 そして,その中心にはあの小さくて可愛い女の子。 無邪気に笑うその裏は嘘だと言いたい。 清佳と叶菜はお互いの手を強く握る。 2人の手は震えが止まらなかった。 「じゃあ,ルール説明……ってあっ!」 女の子がそう何かを話すと,もう殺されるのではないかと体も心も震えていた。 耳を塞いだり目を塞いだり。 もうその言葉や光景を受け入れたくなかった。 「私自分のこと紹介するの忘れてた!私の名前は血狐!チコちゃんって呼んでね!」 明るい声でそう言うと,黒いドレスをひらひらさせながらクルッと回って見せる。 まるで天使が悪魔に支配されているよう。 「じゃあ,ルール説明をするね!邪魔者がいなければこんなに遅くならなかったのに……まっいっか!」 ルール説明,ゲームの流れを遠回しにするように話をする血狐。 邪魔者は血狐の方……でも,もしそんな事を口に出してしまったら。 「じゃあ,ルール説明をするね!さっきも言ったけど1つだけ!でもその1つをできなきゃ死んじゃうの!どう?スリル満点のゲームでしょ!生きるか死ぬかの戦い!で,そのルールは……」 少しの間の後ルールを話す。 「走って走って走り回ること!」 そう聞いてた清佳は反応に困る。 頭を使わずにゲームを進められる希望は持てたものの,足には自信がない。 どう生き残ろうか考えていると,血狐がパンパンを手を叩いた。 「て事で!次のゲームは『変わり鬼』!鬼ごっこの基本中の基本!楽しみだな〜!」 『変わり鬼』か……。 相手を見捨てる事もできるけど助ける事もできる。 基本とはいえ走る事はやっぱり速い方が有利。 隠れる場所があるならずっと隠れておきたい。 でも,それがこんな“死のゲーム”というものなのかが分からない。 それなら,ほとんどの人が隠れて元々鬼だった人たちが……。 「みんな『隠れてよう……』なって思ってないよね?まぁ無理なんだけどね!」 考えた事が当てられたのはなんだか悔しいけど,それより「無理」の意味は? ずっと隠れているのが不可能,それがこのゲーム。 「1人一回は鬼にならなきゃいけないんだよ!鬼に一回もならなかった人は即脱落!ルールにも合ったでしょ?「走って走って走り回る」って!」 「即脱落」それは「死」を表すのだろう。 「それじゃあ,ゲーム会場へ移動するね!」 血狐がある一点を見つめると,そこには大きな扉があった。 そして血狐がその前まで行くと自動で扉が開く。 あんなに大きな扉が自動で開くなんてすごい技術,それよりも気になる事があった。 「あそこにあんなのあったっけな……?」 清佳が目を覚ました時あんな扉はなかった。 暗く細部まで見えないとはいえあんな目立つ扉は必ず目につくはず。 それを見落としたとは考えられない。 でも今はゲームに集中しよう。 そう考えているうちにほとんどの参加者が扉を通っていた。 慌てて立ち上がると叶菜もすぐそばに立っていた。 いつの間に手を離したんだろう? そんな小さな疑問を持ちながら清佳たちも扉を通る。 扉の先には一方通行の細長い通路があった。 全面真っ黒く塗られており,血狐の楽しそうに喋る声だけが頼りだった。 数分間そんな空間が続くと少し先に明かりが見えた。 それに向かって駆け足で行く。 通路を抜けると,そこは小学校にある校庭のような場所だった。 左には遊具。 右にはバスケットゴール。 正面にはサッカーゴールがあった。 奥には木々が植えてあり,隠れようと思えば隠れられる程だった。 清佳たちは運動場の真ん中に集まると,血狐が何かを取り出した。 「ジャッジャーン!くじ引き!これで当たりを引いた人が鬼だよ!」 そして次々とくじを引いていく。 悲しむ声や喜ぶ声。 でも,一回は鬼にならなければいけないのならば最初に鬼になった方が楽。 しかし,清佳たちは中々選べなく最後の2択になってしまった。 よくよく考えると人数がとてもピッタリになっている。 元々の参加人数が分かったとしても最初の方で死んでいる人がいる。 だとしたらなぜこんなにもピッタリなのか? 元々この人数になるように仕向けていた? あれこれ考えながら清佳と叶菜もくじを引く。 そして2人は鬼ではなく逃げる方になってしまった。 でも鬼に捕まれば良い話。 「参加者43人で鬼に13人!最後に鬼だった人が脱落!分かった?」 その言葉に参加者は頷く。 「じゃあ逃げる人は今の間に好きなところへ!」 その瞬間,走り出す人もいれば走り出さない人もいる。 私たちは走り出さなかった。 最初に鬼になって他の人をタッチすればいいから。 「じゃあ第1ゲーム『変わり鬼』の………」 「スッターーートーー!」 そう血狐が叫んだ時恐ろしいゲームの最初の地獄が始めることとなった。
お遊び鬼ごっこ
3−ようこそ 「なんで清佳が……!」 冷たい床。 目を開くと叶菜の姿が見えた。 周りを見ると情報を整理しながら体を起こす。 「ここは,どこかの体育館?」 そこは体育館のような作りになっている巨大な建物の中だった。 窓はなくドアも見あたらない。 部屋は電気も付いておらず細部まではわからなかった。 そして沢山の子どもたちが集められていた。 その中に私と叶菜もいる。 「清佳?なんで参加したの……」 叶菜がそう言った時,全体に電気が付いた。 そして中央部分に小柄な女の子が見えた。 「あれは?」 黒のヒラヒラのドレスに長い黒髪。 年齢は私たちと同じくらいの10歳ほどに見える。 そして,女の子は無邪気な笑顔で何かを説明し始めた。 「今から君たちには生死を彷徨ってもらいます!」 生死……? まさかあのゲームの事? そして小柄な女の子の言葉にこの場にいた全員がざわめき始めた。 「生死?何を言っているんだ」 「子どもじゃねぇか。本当に死のゲームなのか?」 「はぁ。おふざけじゃん」 「“あれ”は嘘だったのね……」 怒りの声や悲しむ声。 沢山の声がこの場所に響く。 正直のところ清佳は嬉しかった。 少しでもこのゲームが嘘だと言う希望が持てたから。 叶菜と普通の日常が送れる。 またみんなの顔が見れる。 死なないで済む。 ただただ嬉しかった。 でも叶菜は違った。 負の感情が滲み出ているように見えた。 怒り,悲しみ,後悔。 清佳にはその意味がわからなかった。 口々に文句が飛び交う建物の中,小柄な女の子は怒りをぶつけるように叫んだ。 「信じてないの⁉︎酷い…!そんなの事言うなんて!私怒ったよ!知らないよ!」 ほっぺを膨らませ怒っている女の子は,とても可愛く見えた。 皆がその女の子を甘く見た時だった。 その空間にただただ悲鳴が響いた。 それに加え血が飛び散る音。 地獄絵図だった。 狐の面を被った人たちの手には血のついた包丁。 その包丁で周りにいる人々を切りつけていった。 そしてその狐の面を被った者たちも私たちと同じくらいの子供だった。 「子供が人を殺してる……」 そう小さく呟くと狐の面を被ったものたちは清佳たちに目を向けた。 叶菜は必死に手を引っ張るも,清佳はその光景に足が動かなかった。 「清佳!ねぇ清佳!逃げようよ!」 涙目になりながら叫び続ける叶菜。 清佳はもう何も考えられなくなっていた。 すると狐の面を被った子供の1人が清佳の頭目掛けて真っ赤に染まった包丁を振り下ろす。 「清佳!」 清佳の手を握りながら叶菜は泣き崩れた。 「ほーら。私を怒らせたらダメでしょ?」 その時あの女の子の声が聞こえてきた。 そして,それと同時に清佳の前の者も動きを止める。 包丁を持った手を下ろすと女の子の前へゆっくりを足を進めた。 清佳と叶菜は座り込んだ。 「みーんな!私の話を遮らないで!ルールを説明するから!そういえばなんでここが真っ赤に染まってるの〜?でもこれもこれで可愛い!」 その言葉に周りの人々は何も言えなかった。 無邪気に笑う子供の姿が恐ろしくてしかなかった。 パンパンと拍手をするとこのゲームについて説明し出した。 「じゃぁ,簡単にルール説明をするね!といっても1つだけなんだけどね!アッハハ!」 すると,なかなか話を進めない女の子に怒りを抑えきれなかったのか,1人の男の人が立ち上がった。 「なぁ!お前は何をっ……」 その時隣にいた女の人が口を押さえた。 「何するんだよ!」 そう女の人に叫び男の人が後ろを振り返ると。 バシャッと血が飛び散る音が建物内に響いた。 「きゃ!」 隣にいた女の人にもその血が飛び散ると短い悲鳴を上げた。 急いで口を塞ぎ殺されずには済んだ。 しかし隣には頭が真っ二つにされた死体がありいつ悲鳴を上げてもおかしくはなかった。 そんなのは女の子に見えていないのか,楽しそうに話を進めた。 「もぉ……どいつもこいつもうるさいんだから!そうだ!君たちを感慨するのを忘れていたね!」 「ようこそ!「お遊び鬼ごっこ」ゲームへ!」
お遊び鬼ごっこ
2−ゲーム参加 目を覚ました清佳は,パソコンの方へ目をやった。 パソコンを開くとメールが届いていた。 それは,あの怪しいサイトからだった。 不安に思った清佳だったが,そのメールの内容を見た。 栗花落清佳さんへ 「お遊び鬼ごっこ」ゲーム参加誠にありがとう! ゲームに参加するためにはこの場所に明日の0時に来てね! そう,短い文章の下に地図が載っていた。 「ここが集合場所か。叶菜と会えるのかな……?」 小さく呟いた後,清佳は学校へ行く用意を始めた。 その時も「お遊び鬼ごっこ」というゲームについて考えていた。 もしこのゲームが本当だった場合,私たちはどうなるんだろう。 死ぬか死なないかの瀬戸際に立つ事になるのかな。 仲間を売ってしまうことにもなるのかな……。 いや,決してそれはない……というか私にはできないな。 でも売られてしまう事はあるかもしれない。 その時は……必死で生きよう。 朝食を取り玄関へ向かう。 「行ってきまーす」 「気をつけてね」 そんな,朝聞くような普通の会話。 でも,それが明日の事で出来なくなってしまうかもしれない。 母さんの顔も,今日で見るのが最後になってしまうかもしれない。 やっぱり怖い……。 靴を履き,ドアを開けると叶菜が待っていた。 「お,おはよう」 そう言いながら清佳はドアを閉めた。 「おはよー」 いつものように話す叶菜が今日は怖く見えてしまう。 あのゲームに参加した1人なのだから。 でもきっと叶菜にも事情がある。 そう信じて清佳は叶菜と並んで学校まで登校した。 その間2人は話そうとしなかった。 清佳は話すのが怖かった。 叶菜もいつもと何かが違った。 叶菜も怖いのかな? 後悔してるのかな? 5年2組と書かれたプレートがある教室に入ると,部屋の全てから楽しそうな会話が聞こえてきた。 「この会話も……」 そう小さく呟いた清佳は一直線に自分の席に着いた。 用意を済ませると暇になった清佳はまたあのゲームの事を考えていた。 死なないかな? 本当に死のゲームなのかな? 本当のお遊びかな? ずっと同じ事を何度も何度も。 考えてもキリがない事は清佳もわかっていた。 「でも……」 放課後,靴を履き替え水筒を片手に持った清佳が小さな公園に来ていた。 小さな公園といえ,周りにはマラソンコースがある。 冬はここでマラソン大会を行なっておる。 スタートラインに立つと,まずは軽い足取りで最先を切った。 途中からは勢いを上げ走り出した。 2週目に差し掛かると,息が荒いでは済ませなくなってきた。 寒いはずの天気が今はただただ暑い。 汗だくになりなった清佳は近くのベンチに座り込むと,水筒の蓋を開け勢いよく水を飲む。 息を荒げながら倒れ込みそうになる。 しかし,ありったけの力を出し再び走り出した。 母さんと父さんと会いたかったから。 またあのクラスの明るい雰囲気が見たかったから。 叶菜と普通の会話がしたかったから。 その想いを胸に再び清佳は走り出した。 無我夢中で。 0時を告げる鐘が清佳の部屋に響いた。 その時清佳はあのメールの場所にいた。 母さんにバレないようそっと抜け出してきたのだ。 運良くバレなかったものの,夜道は少し怖かった。 近くのベンチで座っていると,一台の黒いペンキで塗られた大きな車が清佳の前で止まった。 「これが……」 そう呟い時車から1人の女の人が出てきた。 その女の子人は狐の面を被ってあり,軽くおじきをすると清佳に車に乗るよう誘導した。 車の中はたくさんの席が並んでおりとても豪華な作りだった。 そして,車の中からは白い何かが出てくると清佳は深い眠りについた。
お遊び鬼ごっこ
1−噂 「えー絶対嘘だよ」 「本当だったらどうする?」 5年2組の教室からは楽しそうな会話が飛び交っていた。 しかし中には怖い話を交わす生徒もいた。 栗花落清佳は親友の柊木叶菜からとある噂を聞いていたのだった。 それは「お遊び鬼ごっこ」という一見楽しそうな噂だった。 しかし,話を進めるにつれ清佳の表情は苦笑いしているようにも見えた。 「だって最近行方不明者多数じゃん。「お遊び鬼ごっこ」ってゲームをやって,鬼に捕まって死んでるんじゃない?」 「そんなのあるわけないじゃん。そんなゲームやってたら警察も動いたるだろうし,やみくもにできないでしょ。というか,よくそんな物騒な事知ってるね」 「噂だよ。最近校内でもよく聞かない?」 叶菜は噂話が大好きな親友だけど,それと反対,清佳はそう言う話は信じないタイプだった。 それに加え清佳は怖い話が大の苦手だった。 しかし叶菜はお構い無しに次々と話を進めていく。 「「お遊び鬼ごっこ」に参加してる人って死のゲームって知ってて参加してるのかな?それとも知らされてないのかな?知ってたらすごい勇気いるけどね。ますます興味が湧いてきた!」 「まさか,参加したいなんて思ってないよね?」 叶菜の思いもよらぬ発言により,清佳は怖くなってしまった。 清佳の顔は引き攣っているが叶菜にはそんなのも目に入らないようで笑顔を絶やさず話す。 「そんなわけないじゃん。死のゲームって私は知ってるんだしさ」 そんな言葉を聞いた清佳は安心しているわけではないが,ホッと一息吐いた。 学校から帰宅し,清佳は1人,自分の部屋で何か調べていた。 検索 「お遊び鬼ごっこ 死のゲーム」 パソコンにそう検索をかけると真っ黒い画面が表示された。 数秒後「パスワード」という表示がパソコンに映し出された。 清佳は迷いなくパソコンのパスワードを入力した。 画面の真ん中にはグルグル回る何かが出ると怪しいサイトへ飛んだ。 「お遊び鬼ごっこ」 参加者募集サイト 画面にそう映し出された。 下へスライドしていくと 住所 名前 生年月日 と個人情報が入力できる場所と 注意点 参加者一覧表 という項目があった。 ・注意点・という項目に目をやると少し身震いする清佳。 怖いものが苦手な清佳は一度躊躇したがここまできたならと注意点を読み上げていった。 「1,正しい個人情報を入力すること。2,この事を誰にも知らせない事。3,命の保証はない事」 たった3つの注意点だったが,1つ1つが参加を躊躇するものだった。 次に・参加者一覧表・という項目に注目した。 そのほとんどが小学5年生から中学2年生の子供達だった。 「どうしてだろう。なんで普段の生活までが……」 写真と名前,年齢,普段の生活までが載せられていた。 そして,ある一点に目をやった清佳は 「ちょっ,叶菜!」 親友の柊木叶菜が参加している事に気がついた。 「叶菜何してるの!こんな死のゲーム参加しないって言ってたじゃない!でも,そうか……。叶菜は注意点を守っただけだよね。でも,やっぱり…!」 実は,清佳がこのようなサイトを検索した理由は,親友の叶菜の事がどうしても気になったからだった。 あの笑顔の中には何かあるんじゃないかと怖くなってしまった。 「叶菜……」 力なくそう発した清佳は・個人情報入力・という項目に行き,住所・名前・生年月日を入力し送信した。 そして 「本当に参加しますか?」という問いかけが出てくると下にもう一度注意事項が書かれていた。 1,正しい個人情報を入力する事 2,この事を誰にも知らせない事 3,命の保証はない事 下にもう一度入力する場所があった。 2度も見てしまうと清佳は怯えてしまう。 しかし,親友がこの恐ろしい死のゲームに参加していると知った清佳は,手を止めずに個人情報を再度入力すると 送信 というボタンをタップした。 「ふぅ……」 ため息を吐き一安心していると 栗花落清佳さん 参加してくれたありがとう! 生きて帰れるかな? と,子供の字で楽しく書かれたものが出てきた。 「本当に,やったんだ……」 ここまできて,やっと我に帰った清佳だがもう後戻りができない事はわかっていた。 パソコンを閉じると清佳はリビングへ夕食を食べに行った。 死のゲーム,鬼ごっこ,叶菜…… その言葉が頭の中を行ったり来たりしていた。 清佳は決して足が速いわけでもなく,あの時やめておけばよかった……と後悔していた。 ただ親友がなぜあんなゲームに参加したのか清佳は知りたかったのだ。 あれが本当のお遊びでありますように……。 叶菜と一緒にあのゲームで死になんかしませんように……。 「お遊び鬼ごっこ」という死のゲームの事を考えながらも夕食を食べ進めた清佳は,風呂に入り,自分のベットに横になった。 「叶菜……」 そのまま清佳は眠りについた。
お遊び鬼ごっこ
よく幼稚園や小学校でやる遊び。 かくれんぼやドッヂボール。 特に「鬼ごっこ」は種類が豊富。 氷鬼や増え鬼。 隠れ鬼やケイドロ(ドロケイ・助け鬼)。 沢山の種類が知られている。 「鬼ごっこ」のルールは鬼から逃げ切る事。 ただそれだけ。 簡単な事。 でもそれができなければ鬼に捕まってしまう。 でもそれはあくまでも“遊び”。 捕まっても死ぬわけじゃない。 だから遊びで鬼ごっこをする人たちは,みんな楽しそうな表情を浮かべて遊んでる。 走って,走って走り回って。 逃げたり追いかけたり。 チームで協力する事だったある。 そんな楽しい鬼ごっこが“死のゲーム”になったとしたら。 そんな,恐ろしいゲームがこの地球上のどこかで,今も開催されているのであった。