ちゅうちゅう
3 件の小説ちゅうちゅう
社会で働く中で自分の中に生まれた「言葉」という老廃物をインターネットの世界へ垂れ流していく人。 田舎で社会人してる20代男性です。Twitterもよろしくお願いします!2022、10、31スタート。
あみだくじ ③
朝食を食べながら見ていたニュースに、昨夜の殺人事件のことが流れてきた。犯人は21歳の大学生で、殺されたのはその親だったらしい。 親を殺した大学生は、私と同じく勿論あみだくじの上を歩いていた。ニュースでその様な報道がされていた訳ではないが、私には大学生があみだくじの上を歩いていたとハッキリと分かった。 「失うモノなんて何もない。どうなってもいいと思った。死んで欲しかったから殺した。」 これが犯人の供述だったらしい。 昨日という日を迎えるまでに、犯人は21歳もの時を経ている。人間は失うモノがなくなった時に突拍子のない行動がとれる様になる事はいい意味でも悪い意味でもありがちな話だ。しかし、この話ってよく考えたら意味が分からない。人間誰しも産まれた瞬間はスッポンポンで失うモノなんて元から持っている訳がないのに、ふと気がつくと「大人になって失うモノがなくなった」とか「自分には何も無い」とか言うようになっている。食べ物を与えられて、寝床も与えられて、全てを思い出す事のできない程の時間を与えられて、その結末が「何も無い」という贅沢を殆んどの人間は不幸だと思うらしい。あみだくじの上を歩いていると目の前に選択肢が現れた場合、その場所でどちらに進むか悩んでいたとしても進んでいく未来は元々決められた方向しかないのである。 話が変わるがそういえばこのニュースキャスター、何処かで見覚えがあるような気がする。先週から新たに朝のニュースコーナーを担当しているらしいけれど、自分とは異なる世界線を生きているはずなのに一体どこで見かけたんだろうか。思い出せそうで思い出せないむず痒さを覚えた朝が今日という1日をいつも以上に刺激的にしていくのであった。
あみだくじ ②
⚠︎ 「ちゅうちゅう(自己紹介)」の続きです。 洗いたての朝日が登る頃、ちゅうちゅうは大きな欠伸をしながら歯を磨いていた。いつも通り、毎週訪れる何の変哲もない月曜日である。日曜日のスイッチが切れないまま、心の気怠さを理性で抑えて仕事へ向かう準備をしている。 「なんかね、あみだくじの上を歩いている事に気付いてなかった頃と比べると、何ひとつ目の前の景色は変わらないはずなのに脳みそとか心とかがはち切れそうになるんだ。」 この文章を読んでいるあなたにちゅうちゅうは問いかけている。 「問いかけたところで何も返ってこないぞ?何言ってんだ?こいつ。」 あなたがそう言いたくなるのは分かる。しかし、全く問題ない。ちゅうちゅうはそんな事くらい言われなくても痛い程分かっている。 ヒトリグラシに慣れた人間は、特に意味もなく当たり前に独り言を呟いたり家の中にある家電製品や日用雑貨などに喋りかけたりするもんであるから、あなたに問いかけたのもその中の一種なだけである。 まぁそんな事はどうでもよくて、私は今あみだくじの上を歩いている訳で、あみだくじの上を歩いていると、どんな時でも今まで考えなかった事を考えてしまう様になる。 その理由は大きく2つある。まず1つは、あみだくじの上を歩いていると行き着く先は必ず分岐点であるからだ。分岐点なんか存在しなければ、何も考える事なく真っ直ぐ歩いていくだけであり、私達に悩みなんてものは存在しない事であろう。そして一応あみだくじとは、よく学校の席替えの時などに使うスタートした位置から真っ直ぐ進んで分岐に当たったら必ず直進ではなく曲がらなければいけないあの有名なクジである。実際に私達の足元にあみだくじが目で見えるように書かれていて、ただその上を歩きましょうというだけの話であれば何の問題もないのだが、リアルな現実社会の中では話が大きく変わってくる。それが理由の2つ目、私達が歩いているあみだくじはどれだけ目を凝らして肉眼で見ようと思っても不可能なものであるという事だ。 ちゅうちゅうは仕事へ向かう準備をするにあたり、朝ご飯を食べようとして冷蔵庫を開いた。昨日の夕飯の残りをレンジで温めつつその間にスマホでニュースを探している。先週は少し起きる時間が遅かった為に朝ご飯を食べずに仕事へ出かけたが、今日は朝ご飯を食べているという事で予定通りの時間に起きれたという事になる。 しかし正直、起きるのが早かろうと遅かろうと朝ご飯を食べようと思えば食べることができるのがちゅうちゅうである。けれども先週は朝ご飯を食べなかった。理由は当たり前かもしれないが、それは仕事に遅刻しないためにだった。。。 健康の為に朝ご飯を食べるのか、仕事に遅刻しないために朝ご飯を抜くのか、あのとき当たり前のように後者を選んだちゅうちゅうであったが目の前には確かな分岐点が存在していたのである。 そんな事を想いながらレンジで温めた朝ご飯を食べているとスマホの画面には殺人事件のニュースが流れてきた。 あみだくじ③へ続く。
ちゅうちゅう (自己紹介)
拙者、ちゅうちゅうと物申す。 筋肉、隆々とは程遠く、どちらかと言えばスーパーで18円の値が付けられているもやしの様なヒョロヒョロ人間でごーざんす。 日本は愛知県、愛知県は瀬戸市、小さな会社に勤めて3年が経とうとしている頃、ヒトリグラシにも慣れ慣れしく接する事ができる様になってきたちゅうちゅうは1本の「あみだくじ」の上を歩いている事に気がついてしまった。大学を卒業してから就職して社会人になったちゅうちゅうは現在25歳であるが、25年間生きてきてこのあみだくじの上を歩いてきたことに気が付いたのはつい最近の事だ。 さらに、周りを見渡すと恐ろしい事にこのあみだくじの上を歩いているのはどうやら自分1人ではないらしい。通勤途中の電車で同じ車両に乗っていた顔も名前も知らない人も、一緒に働いている職場の人も、そして誰より今この物語を読んでいるあなた自身も、しっかりとあみだくじの上を歩かされてしまっている様である。 ちゅうちゅうのあみだくじが辿り着くゴールはいったい何処であり、その他にあみだくじの上を歩いてしまっている人達が何処へ向かって歩いているのか、そもそも誰があみだくじを作り出したのか、ちゅうちゅうが「あみだくじ」の存在に気がついてしまった瞬間からこの壮大な物語は始まりを告げた。 次回、「あみだくじ ②」