ひぐらし
147 件の小説ポジティブ!
……ポジティブが、1番怖い。
回転寿司
そうなんだよね。 あんたってさ。 最初のデートも、回転寿司だったよね。 あん時、わたしってさ。 あんたのことが、好きで好きで、たまんなかったからさ。 あんたと一緒にいられるんだったら、もう、なんでも何処でも良かったんだよね。 だからさ。 結局のところ、あんたにとってのわたしって、何だったのかなって。 好きとかじゃなかったってことなのかな? クリスマスイブ、誕生日、なんだかんだの記念日。 あんた、いなかった。 ああ、わたしは。わたしって奴は。 あんたにとっての、所謂、『都合の良い女』、『騙しやすい女』。 不倫とか、浮気だとか。 これでも、こんな女でも、無縁だと思っていたんだよ。 こんなわたしだって、 「わたしだけを見て」 って言いたいんだよ。 なのに、あんたときたら……。 あんたの愛しているその『ご家族』とは、特別な日は何処で過ごすんだろうね? 良いよ。もう。 さよならするのも、回転寿司で良いんだよ。
紫煙
煙草の味を覚えたのは、あなたの為だったのかもしれない。 ただ、あなたに近付きたかった。 あの頃のわたしは、あなたに夢中だった。 あなたに何人女がいようとも、それら全ての女性が、体かお金目的であっても。 あなたは、本気で人を愛したことがないと言った。 わたしは、それを信じた。 あなたは最低な男でも、全ての女性に対して、同じ態度を取っていた。 一人一人の弱い所に応じて。 わたしが、あなたから離れることは、考えられなかった。 どうしてかしらね? 何で繋がっていたのかしら。 今となっては、分からないわ。 だけどね。本当に、あの頃のわたしは、彼に夢中だったの。 インタビューに答える目の前の女性は、吸っていた煙草を口から出して、 (ふうっ) と溜め息をついた。 動機?そんなの。 あの人って、ただ、遊んでいただけ。 女以外に、ヤバい事にも関わっていた。 それが、世間にバレない、というか、バレたところでなんだけど。 揉み消す奴らがいるってこと。 だから、この事だって。 事故になっているでしょう? 記事にする? 大丈夫よ。狙われたりはしない。 あんたもわたしも。 あっちも遊びなら、こっちも遊び。 お互い様よ。 カメラの前で、高らかに笑う女性。 俺の書いた記事など屁でもない。 偉い立場と底辺の人間達。 「どっちなんだろうな。本当に上の立場ってのは」 賑やかな街のビルの大型ビジョンを見上げながら、そう呟いた。 「一生、誰かの奴隷になっているってことだろ?」 大型ビジョンには、理想的な家族が映し出されている。 妻の目は笑っていなく、夫の口は引きつり、 夫婦の子供であろう女の子は、 創作された笑顔だった。
気遣い
母は言った。 「あんたは女の子なんだから」 ああ、本当に嫌になる。 「だから、なに?」 「もうちょっと、気遣いというか……」 ああ、なんだろうな。この感覚。 「男とか女とかって、関係なくない?」 「昔から、そういうものなのよ」 女だから、家事をする。女だから、お茶を汲む。 男は何もしなくてもいい。 食事も黙って座っていれば、出てくる。 いつの時代だよ。まったく。
記憶
僕の記憶の中で唯一光るもの、それが君だった。 思春期とは、残酷な時期だ。 将来と恋愛の狭間、そこに、君が入り込んできた。 初めて覚えた、心の動揺。 会っていても、会わないでいても、歯痒い想い。 どうすれば良かったのか? 僕は、将来を取った。 両思いなのか、そうでないのか、分からなかった為なのか? 分からない。今だに、分からないでいる。 そんな中、久しぶりに再会した友人から、君が結婚をし、二児の母となっていることを聞いた。 僕は思わず、笑ってしまっていた。 おかしな者を見るような目で、彼は見ていた。 「なんだよ。なんで、笑ったんだよ?」 そう言っている彼も、僕につられて笑っている。 「いや、時は流れているんだなって」 僕のその言葉で、何となく、彼も察したようだった。 「……。そうだな」 幾分、間を開けて彼は呟いた。 彼と別れた後、帰る道すがら、ぼんやりと空を見上げた。 赤々と燃えるような夕焼け。 「ふうっ」 と息を漏らして、小さく 「明日も仕事だなぁ」 と言った。 忙しい日々に、時々思い出す程度で良い。 記憶の中の友達と君と僕。 思い出だけでは生きられないけれど、 思い出がないのは、つまらない。 「ぼちぼち、いきまひょか」 太陽が落ちた空は、夜を迎え始めていた。
価値観
ある人にとっては、すごくくだらないもの。 ある人にとっては、とても大切なもの。
実感
夜に眠れないのは、ツラい。 (あくまでも、個人の感想です)
ハンディファン
ハンディファン、 暑さだけでなく、 悩みと嘆きも、吹き飛ばしてくれないかなぁ。
愛と殺意
分かってしまったよ。君が、俺以外の男と夜を過ごしたことを。 俺じゃ、満足できなかったのかい? いや、それとも、俺の君に対する愛情が重たくなったのかな? まぁ、いいさ。今回は許してあげるよ。 俺にも、君以外に、愛情を注いでいる人達がいるからね。 え?君だけにしろって? それはできないね。 だって、彼らは、俺を求めているからね。 ふっ。何を勘違いしているのだか。 僕が愛しているのは、たった一人だけ。 貴方との関係は、仕事の上でのことですよ。 他の人達も、そうですよ。 貴方は、偉くなり過ぎましたね。 だから、肝心な事が分からなくなってしまった。 仕方がないでしょう?こうなったのは。全部、貴方の責任ですよ。 ああ、聞こえていないか。 さっさと別れてくれればいいものを。 アリバイは、バッチリだ。 貴方は、敵の多い人だった。 みんなが、協力してくれた。 完全犯罪って、案外簡単だねぇ。 ちょっと、楽しくなっちゃったよ。 あとは、彼女との結婚だ。 今度の事、今までの事、全て知った上での結婚。 彼女は、優しい人だ。 大丈夫ですよ。 貴方は、土の下。 僕らは、結託した。 これから、みんな、本物の幸せを掴むんだ。 貴方のようなケダモノは、一生、眠っていろ。
愛と殺意
分かっていた。あの人は、駄目なんだって。 でも、求めた。私は、求め続けた。 だけど、もう、限界だった。 気が付けば、あの人は、死んでいた。 私の手には、包丁。あの人が愛用している物を、私は、この手に握っていた。 愛する息子からのプレゼント。そう、それで、 刺してやった。 快感でしかなかった。 私はね、母さん。ずっと、求めていた。 貴女の愛を。 「堕したかったのよ。あんたは」 と、母。私を前にして、言った。 「だって、長男を産んだんだから、もういいでしょ。でも、お父さんのお母さんが」 父の母、つまり、私の父方の祖母から、 「余裕があるなら、兄弟は多い方が良いって。馬鹿だったわ、私」 私を産んだ時から、自分よりも父の方に似ているせいか、私のことをお気に召さなかったようだ。 それでも、私は母に愛されたいと願い、今まで、顔色を伺いながら、小さくなって、生きてきた。 決定的な出来事があったわけではない。 ただ、そこに母がいて、包丁があった。 ただ、それだけのことだ。 埋めるのも、面倒。 自首をする。 一瞬、兄に負わせようと思ったけど、 それも面倒。 母親殺しの長女。母親殺しの妹。 それで良い。 完璧じゃない? ねぇ、母さん。