ひぐらし

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ひぐらし

似非物書き

通じない

駄目だとは分かっている。 しかし、求めてしまう。 私があの人にした事は、大した事ではないのかもしれない。 だけれども。 せめて、冷たい仕打ちだけはしてほしくなかった。 私があの人に対して行なった全てに、見返りなんてものを求めているわけではない。 ただ、ただ……。 私は、私の人生を歩まなければ。 酷い仕打ちはされたけど、学ぶ事も多かった。 もう、いいでしょう? 私は、解放されたい。 あなたは、言ったわよね? 私が、気を使い過ぎだって。 もう、いいわよね? もう、あなたの顔色を見る生活を終わらせても。 さよなら。 置き手紙とともに、鍵が添えられていた。 ふうっと、溜め息をつき、ドアを見る。 痣だらけの、女の体。 「当てつけがましいんだよ」 と、足で蹴る。 そして、スマホに耳を寄せて、番号を押していく。 「はい。一応。……ああ、警察ですか。死因?」 と、電話の相手とやり取りをする。 通話を終えてから、また、違う番号を押す。 「すいませ〜ん。また、お願いしますぅ」 半ば、ふざけながら、男は幾分媚を含めて言った。 「たくっ。ちょっとは丁寧に扱え!」 怒気を含んだ相手の男の声。 「へ〜い」 と一方的に電話を切った。 軽く舌打ちをしてから、女を見た。 女が、その体を使って商売をすることを斡旋して、サポートする。 それは、別に珍しい事ではない。 ただ、この男の場合は違う。 この男には、悪い癖がある。 痣ー、つまりは、暴力だ。 愛情と狂気が表裏一体という、酷い悪癖である。 「愛情ってさぁ。厄介だよなー」 と言って、男は煙草に火をつける。 「通じないって、厄介だよな」 と呟いてから、煙草を咥え、 「もうじき、お迎えが来るよ。それから、お前は自由になる。本気だったんだぜ。これでも」 玄関のドアを開けると、眩しい太陽の光が、男の目を刺した。 自死に見せかけるー、そんなに難しくはなかった。 女にとっては、不運だった。 外に出ようとしていたところを外から帰って来た男と出会してしまったのだ。 男の目にテーブルの上に置かれた封筒が、映った。 女は怯える。 「……お前もかっ!」 男は、そう言うのと同時に、女を殴っていた。 「お前を拾ったのは、俺じゃねぇか!俺が拾ってやんなきゃ、お前は」 「ごめんなさい!だけど、私、もう」 涙に濡れた女の顔からは、生気が感じられなくなった。 男にとって、この様な事は、初めてではない。 しかし、 「もう、俺も嫌になっちまったな」 容貌が良く優しいので、彼はモテた。そこにつけ込まれ、悪い連中から利用されるようになった。 初めの頃は、調子が良かった。ただ、彼の内面が少しずつ表に現れ始めた頃から、状況は悪くなっていった。 いつも、愛情に飢えている。飢えた狼のようだった。 別れが何よりも、怖かった。 「今度ばかりは、違うんだよ」 廃墟が多くなった都市の片隅で、彼の亡骸が見つかったのは、初冬の頃。 凍てつく空気は、心なしか、澄んでいた。

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試行錯誤

どうにかこうにかして、この何とも形容し難い日常を どうにかこうにかして、この遣る瀬無い思いを 少しでも、良い方向に、変えていければな。と思う。 生まれてから死ぬまで、短いんだか、長いんだか、分からないが、 「まぁ、なんとかなるか」 と呟きつつ、 「まぁ、なんとかしなくちゃな」 と、時に自分を鼓舞しながら、 ぼちぼち、歩んで行こうかな。と思う。

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本棚

いけない本が並んでいる。 親達は言う。 「読んでは駄目だ」 と。 僕は思う。 「だったら、何故此処に在るの?」 親達は答えない。 「時期」が来たら……。 読んでも良いらしい。 だけど、その「時期」が来る前に。 悪魔は突如として、現れた。 いや、そうだよ。 それは、僕だよ。 あの本に書かれていた、呼び覚ましてはいけない者。 僕は、不幸を装った。 両親を一度に亡くしてしまった少年。 金には困らない。 何をやっても、許される。 怠惰を極める僕の生活。 あの本は、全部で十冊。 子供の僕には読めないと思っていたが、案外簡単に読めた。 本は我が家に代々、受け継がれてきた物だった。伝記小説といったところか。 その本に書かれていた事によると、我が家の家系において百年に一度、ならず者が現れるらしい。 そのならず者が、僕だったってことかな。 そして、そのならず者は財産を食い尽くそうとし、親族の命を奪う者となる。 だけど、そのならず者の末路は悲惨なものとなるらしい。 そして、この一族は決して滅びることはない。 重い扉が開く。 「お前の役割は終わった。次の場所へ行く」 人は、増え過ぎても減り過ぎてもいけない。 数は常に合っていなければならない。 数を合わせる為に、通称「悪魔」は創られた。 人の心の中に入り込み、一通りの殺戮をし、別の場所に連れ去られる。 世界の闇を背負う者、世界を創り出す存在。 そして、本棚は満たされる。

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ポジティブ!

……ポジティブが、1番怖い。

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回転寿司

そうなんだよね。 あんたってさ。 最初のデートも、回転寿司だったよね。 あん時、わたしってさ。 あんたのことが、好きで好きで、たまんなかったからさ。 あんたと一緒にいられるんだったら、もう、なんでも何処でも良かったんだよね。 だからさ。 結局のところ、あんたにとってのわたしって、何だったのかなって。 好きとかじゃなかったってことなのかな? クリスマスイブ、誕生日、なんだかんだの記念日。 あんた、いなかった。 ああ、わたしは。わたしって奴は。 あんたにとっての、所謂、『都合の良い女』、『騙しやすい女』。 不倫とか、浮気だとか。 これでも、こんな女でも、無縁だと思っていたんだよ。 こんなわたしだって、 「わたしだけを見て」 って言いたいんだよ。 なのに、あんたときたら……。 あんたの愛しているその『ご家族』とは、特別な日は何処で過ごすんだろうね? 良いよ。もう。 さよならするのも、回転寿司で良いんだよ。

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紫煙

煙草の味を覚えたのは、あなたの為だったのかもしれない。 ただ、あなたに近付きたかった。 あの頃のわたしは、あなたに夢中だった。 あなたに何人女がいようとも、それら全ての女性が、体かお金目的であっても。 あなたは、本気で人を愛したことがないと言った。 わたしは、それを信じた。 あなたは最低な男でも、全ての女性に対して、同じ態度を取っていた。 一人一人の弱い所に応じて。 わたしが、あなたから離れることは、考えられなかった。 どうしてかしらね? 何で繋がっていたのかしら。 今となっては、分からないわ。 だけどね。本当に、あの頃のわたしは、彼に夢中だったの。 インタビューに答える目の前の女性は、吸っていた煙草を口から出して、 (ふうっ) と溜め息をついた。 動機?そんなの。 あの人って、ただ、遊んでいただけ。 女以外に、ヤバい事にも関わっていた。 それが、世間にバレない、というか、バレたところでなんだけど。 揉み消す奴らがいるってこと。 だから、この事だって。 事故になっているでしょう? 記事にする? 大丈夫よ。狙われたりはしない。 あんたもわたしも。 あっちも遊びなら、こっちも遊び。 お互い様よ。 カメラの前で、高らかに笑う女性。 俺の書いた記事など屁でもない。 偉い立場と底辺の人間達。 「どっちなんだろうな。本当に上の立場ってのは」 賑やかな街のビルの大型ビジョンを見上げながら、そう呟いた。 「一生、誰かの奴隷になっているってことだろ?」 大型ビジョンには、理想的な家族が映し出されている。 妻の目は笑っていなく、夫の口は引きつり、 夫婦の子供であろう女の子は、 創作された笑顔だった。

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気遣い

母は言った。 「あんたは女の子なんだから」 ああ、本当に嫌になる。 「だから、なに?」 「もうちょっと、気遣いというか……」 ああ、なんだろうな。この感覚。 「男とか女とかって、関係なくない?」 「昔から、そういうものなのよ」 女だから、家事をする。女だから、お茶を汲む。 男は何もしなくてもいい。 食事も黙って座っていれば、出てくる。   いつの時代だよ。まったく。

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記憶

僕の記憶の中で唯一光るもの、それが君だった。 思春期とは、残酷な時期だ。 将来と恋愛の狭間、そこに、君が入り込んできた。 初めて覚えた、心の動揺。 会っていても、会わないでいても、歯痒い想い。 どうすれば良かったのか? 僕は、将来を取った。 両思いなのか、そうでないのか、分からなかった為なのか? 分からない。今だに、分からないでいる。 そんな中、久しぶりに再会した友人から、君が結婚をし、二児の母となっていることを聞いた。 僕は思わず、笑ってしまっていた。 おかしな者を見るような目で、彼は見ていた。 「なんだよ。なんで、笑ったんだよ?」 そう言っている彼も、僕につられて笑っている。 「いや、時は流れているんだなって」 僕のその言葉で、何となく、彼も察したようだった。 「……。そうだな」 幾分、間を開けて彼は呟いた。 彼と別れた後、帰る道すがら、ぼんやりと空を見上げた。 赤々と燃えるような夕焼け。 「ふうっ」 と息を漏らして、小さく 「明日も仕事だなぁ」 と言った。 忙しい日々に、時々思い出す程度で良い。 記憶の中の友達と君と僕。 思い出だけでは生きられないけれど、 思い出がないのは、つまらない。 「ぼちぼち、いきまひょか」 太陽が落ちた空は、夜を迎え始めていた。

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価値観

ある人にとっては、すごくくだらないもの。 ある人にとっては、とても大切なもの。

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実感

夜に眠れないのは、ツラい。 (あくまでも、個人の感想です)

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