終電

父を見送る為に、私は帰省していた。 友人、家族など親族たちと久し振りに会ったので、話し込んでしまい、気がつくと終電間近という時間になっていた。 急な死だった。母は、今より数年前に他界している。長患いの末の、とても辛い別れであった。特に父の落胆は、相当なものだった。 父は、母の後を追った。つまり、自死だった。母が亡くなった直後は、色々と気に掛けて会いに行ってくれていた親戚も、自身の生活もあるので、年に数回訪ねる程度になっていた。かくいう私も、同じように、父から遠ざかっていった。連絡は、電話だけになってしまっていたのである。 「そろそろ、身の周りの物を片付けたい」 ある日、父から電話がかかってきた。自分も手伝うと申し出たのだが、 「いや、自分一人で大丈夫だ」 と断られてしまった。今から思うと、無理矢理にでも父の元に帰っていれば良かったのだ。結局、その時の会話が最後となったからである。
ひぐらし
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似非物書き