このは

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このは

1日1日をただ生きている

小さな奇跡

「ねぇねぇ知ってる?」 「んー?何を?」 「おばあちゃんから聞いたんだけど、ここら辺だと花火の上がる日に気になる人との間に四つ葉のクローバーがあると幸せになれるって伝説があるんだって!」 キラキラした目と早口でそう説明する幼なじみはもう17にもなるのに、どこか子供っぽかった。 「なんだそりゃ、そもそも花火が上がる日って年に1回ある花火大会のことだろ?たまたまその日に四つ葉のクローバーが好きな人との間に咲いてるって天文学的数字じゃんかよ」 「えー、、でもロマンチックじゃない?!昔っからそーいう系の話すると否定してくるけど、あんたには夢ってのがないの!?」 「そう言うのは信じないタイプなんです〜、そんなんばっか信じてるからいつまでも子供っぽいんだよ、お前は。」 「うるさいなー!じゃー今度の花火大会一緒に行ってやんないからね!」 「せっかく新しい浴衣も買ったのに。」 「な!行かないとは言ってないだろ!」 「ふーん、じゃあ18時にここで待ち合わせね」 花火大会の日 「お待たせ〜!」 「18時からって言ったお前が30分遅刻してどーすんだよ!」 「ごめんごめん!浴衣で走れなかった笑」 ほのかに香る、屋台の匂い 花火が照らす幼なじみの顔を俺は直視ができなかった 「よし、ここに座るかぁ」 「いい場所とってあんじゃーん!花火綺麗〜♪」 「ま、まぁな」 前日楽しみで取っておいたとは口が裂けても言えない。 「花火綺麗だね。」 「そうだな。」 暫く無言が続いてから、俺は勇気をだして声にした 「........なぁ俺お前のこと好きだよ」 ドカンと大きな音を立てて色鮮やかに空に咲く花火を見上げていた君は、俺の方をそっと向きこう言った。 「え?なんて?花火の音で聞こえなかった!」 「も、もう言ってやんねぇ!」 「えーなんでよー気になるじゃ........あ!」 「ん?どした?」 「ねぇこれって」 そう言った君の目線の先には四つ葉のクローバーが咲いていた 「奇跡だね」 「奇跡だな」 色鮮やかな花火が咲く夏の夜に起きた小さな奇跡 夏が来る度に私は父と母からこの話を聞かされる。

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