うの

1 件の小説
Profile picture

うの

うのです。自由に書きたいものを書きます

夢

夢を見た。 どんな夢だったのか、目が覚めた瞬間にはもう思い出せなかった。 ただ、胸の奥に何か大切なものを置いてきたような感覚が残っていた。 夢の中では、もう会えない人が笑っていたのかもしれない。 昔の自分が、まだ何も知らずに走っていたのかもしれない。 あるいは、これから出会うはずの誰かが、ずっと前からそこにいたのかもしれない。 夢は不思議だ。 眠っているあいだだけは、 失ったものも、届かなかった願いも、遠ざかってしまった時間も 何事もなかったように戻ってくる。 けれど、朝が来れば消えてしまう。 手を伸ばせば触れられそうだったものほど、目を覚ました途端に遠くなる。 名前を呼ぼうとした瞬間には、声さえなくなっている。 それでも、人は夢を見る。 きっと、叶わないと知っているからこそ、夢は美しいのだと思う。 永遠に続くものなら、いつかそれを当たり前だと思ってしまう。 だから、一瞬だけ咲いて朝の光に溶けていく夢は、心の中に深く残る。 目を閉じれば、また会えるだろうか。 そう思いながら夜を待つ。 けれど次に見る夢は、きっと今日の夢とは違う。 だから私は、消えてしまった夢を追いかけるのではなく、 覚えている限りのその温度だけを、そっと胸の奥にしまっておく。 夢とは、叶うものではなく、消えていくものなのかもしれない。 そして消えてしまうからこそ、人はもう一度、目を閉じたくなる。

4
1
夢