すみれ

2 件の小説
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すみれ

紅茶が好きなFJKです 趣味はお昼寝と読書、ほっこりした小説が好きです。 更新速度遅めだと思います。仲良くしてくれたらすごく喜びます⸜🙌🏻⸝‍

神社で猫とランデヴー

今日の雨上がり、私はお散歩へ出かけた。少し薄暗くて雨の匂いがする中を歩いた。今のお家には、今年引っ越してきたのでたまにお散歩で冒険をしているのだ。 この辺は山に囲まれているけれど、人口は多い。地域の人は温かい人ばかりでとても良い場所だ。そして何より、神社が多い。私も宮前通りに住んでいる。 散歩は好き。なぜなら足を前に出すだけで何も考えなくてもいいから。 しばらく歩いていると、大きな木で囲まれている場所があった。神社だった。 曇りのせいもあいまって少し不気味だと感じた。でもなにか、なにかが私を引き止めた。と言うより気づいたら鳥居をくぐっていた。鳥居は境界と境界を繋ぐ大事な門だと、どこかで読んだ。 進んでいくと中は見た目によらず広かった。 そこには−猫がいた。こちらを黄金の瞳で見ていた。近づくと、猫から近づいてきて撫でさせてくれた。 “ゴロゴロ” 猫って本当にゴロゴロ言うのね!とても人懐っこくて可愛らしい。 暫く撫でていると、 じゃり、と誰かが背後から歩いてきた。振り返ると私より年上か同い年くらいの少年がいた。リュックを背負っていてスポーティーな服装をしていた。目鼻立ちは整っていて、ジブリに出てきそうな男の子だった。 私たちは距離を保ち、お互いに警戒とは言わないが、じっとしていた。 男の子は社の裏に回って行った。しばらくしたら戻ってきて、神社から出ていった。 話しかける勇気はなかった。そしたら猫が歩き出し、こっち来て、と目配せをした。 ついて行くと少年がいた社裏には大量の餌とはんぺんが置かれていた。 クールな見た目からは想像もつかなかった。猫ちゃん触りたかったのかな、申し訳ないことしたな。でも少し、かわいいかも。また会えたら次は話しかけられるかな?この神社は私のお散歩の定番の場所になりそうだ。

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神社で猫とランデヴー

蝶を導く甘い蜜

疲れているあなたへ。 突然ごめんなさいね、君が疲れているように見えたの。だから特別に招待するわ。都合が良い時にこの手紙を持って目を瞑って“蝶よ導け”と念じて欲しいわ。胡散臭いけれど、信じて欲しいわ。−あなたの蝶より。 アンティークな便箋に、シーリングスタンプまでご丁寧に押してあった手紙をあなたは見つけた。 ストーカーかな?それとも宗教?普段こんなの破り捨ててしまうだろう。 だけどそれ以上にあなたは疲れていた。考える余地もなく、あなたはその手紙を持って、送り主の言う通りにした。 “蝶よ導け” ぶわっと数え切れないほどの薄紫の蝶があなたの周りを包み込んだかと思うと、見知らぬ森に立っていたのだ。靴を履いていてもなおわかる苔の感触と香り。コンクリートジャングルで生きてきたあなたとは無縁の香り、音、木々たち。 あなたは困惑した。先程までの蝶はいない。辺りはだんだん暗くなってきた。ど、どうしよう… そんな時後ろから足音がコツ、コツと確実に、近づいてきた。 やばいっと思いあなたは振り返った。 そこには薄紫の蝶を数匹連れた少女が立っていた。蝶って懐くものなのか?とも思うが、その少女は不思議な雰囲気を纏っていた。 “来てくれたのね、嬉しいわ” 少女は短めの編み上げブーツに緑のスカート、下にはパニエのレースが見えている。ブラウスはアンティークものだろう。 服装はまるでヴァイオレットエヴァーガーデンのような可愛らしい格好だった。 少女の顔を見た。お人形のように小顔で陶器肌、まつ毛は頬に影を落とすほど長く、頬はうっすら薔薇色であった。つり目ではあるけどキツくなくぼんやりした目元、猫や狐のような神秘を秘めていた。黒髪にエメラルドのような緑色の瞳が映えていた。 その前下がりボブの編み込みをしている少女は言った。 “迷える蝶々さん、私は楓。もう準備は出来ているわ。着いてきて。” あのっ、ここはどこ?あなたは誰? “ここは蝶の森よ。私はここの管理をしているの。迷う者を導くのは神に与えられた役割よ。” 神…?なぜ自分はここに来れたの?さっきまで部屋にいたのに… “そうね、混乱するのは仕方ないわ。私はあなたに危害は加えないし、私の事は時間が経てば分かってくれるわ。時は全てを解決してくれるのよ。” 確かにほっそりとした綺麗な腕では攻撃されないだろう。仕方なくついて行った。彼女が触れた風は、紅茶の香りがした。しばらくすると、開けて芝生だけの場所に着いた。そこには無数の蝶が舞っていて、この世の景色とは思えなかった。 すると、楓がベルを取り出し、チリン、と鳴らした。 次の瞬間、蝶がパッと光り、テーブルにチェア、ティーセットが出現した。テーブルには都会のイケイケ女子がインスタに載せるようなアフターヌーンティーセットよりも素朴だけど華やかな、お菓子が置いてあった。 うん、ここはきっと夢の中だ。そう思うことにしよう。 “さぁ、お茶会を始めましょう。焼き菓子に合うようにダージリンを用意したのだけれど紅茶は苦手?他にもココアやコーヒー、白桃緑茶も用意してあるわ。遠慮しないでちょうだい。” 香ばしい香りが私たちを包み、食欲をそそる。彼女はティーポットを持ち、トポポっと純白のティーカップにダージリンを注いだ。その動作だけでも美しかった。 “さぁ、なんでも話してちょうだい、悩んでいること、愚痴でもいいわ、あなたの気が済むまで話を聞くわ。” 涙が出そうだった。現代社会の疲れがこんなにも息苦しいとは思っていなかった。誰かに話したくても話せず、溜め込んできたのだ。だから、夢の中くらいはいいよねと、全て彼女に吐き出した。 “そうね、あなたはよく頑張っているわ。大丈夫、私はあなたの頑張りを見ているわよ。偉いわ。今まで頑張ってきた分、ここで発散しましょう。おかわりはいる?” いる、と言い私はたくさん彼女と話した。彼女の淹れる紅茶は、今までで1番美味しかった。 彼女のことで分かったことがある。ミステリアスな雰囲気を纏っているけど実は少し天然さん。大人びているけど笑うと年相応の笑顔でとても可愛らしい。彼女は神様に頼まれてここで生まれた時からこの森を守っているらしい。蝶々や森の動物は友達で、よくお茶会を開いている。ここは天国と現世の狭間で、疲れている人や神様たちを招いているらしい。その森を映した緑色の瞳は全てを飲み込んでしまうほどに美しい。 どれくらい話しただろうか。少し眠くなってきた。 “あらあら、やっと落ち着いたのね。森の苔はとてもよく眠れるわ。おやすみなさい。” 私は横にさせられて、目を閉じた。楓は頭を撫でてくれた。 “今日はありがとう。とても楽しかったわ。また会えるといいわね。おやすみなさい、迷える蝶々さん” 待って、まだここにいたい…と最後に聞いた楓の言葉を頭の中で繰り返しながら、目を覚ました。自室のベッドの上だった。不思議と今までの疲れが全くない。むしろ元気が有り余っている。起き上がると手元に何か触れた。メッセージカードにティーパックがついていた。 “迷える蝶々さんへ 私の事覚えていてもいなくても良いけれど、頑張っているあなたはもっと称えられるべきよ。私はあなたの頑張りをいつも見ているわ。この紅茶は疲れも癒してくれる特別なブレンドティーよ。私が調合したの。もしもう頑張れそうになかったら飲んでみて。頑張りすぎは良くないわ、程々に休んでね。じゃあ、また会う時まで。 蝶を導く者より。” 彼女は今日も客人を迎えているのだろうか。もしかしたらあなたにも手紙が届くかもしれない。 “ようこそ、私のティーパーティーへ。迷える蝶々さん”

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蝶を導く甘い蜜