葉月 楓

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葉月 楓

小説初心者です。 暇な時に書くので良かったら読んで行ってください。

クラスメイトB

これは、とある小説の中のお話。 私の通う高校には絶対的な人気を誇る男子生徒が一人いる。 名前を五十嵐としておく。 ヒロインと恋に落ちるいわゆるヒーロー。 その隣にいつもいるヒーローの親友であり、ヒロインの幼馴染である、ヒロインに片思いをしている男子生徒。言わゆる当て馬。 名前を内藤としておく。 ヒロインと内藤は小学校からの同級生。 ヒロインと五十嵐は高校からの同級生。 過ごしてきた時間も思い出の数も圧倒的に内藤とのものが多い。 しかし、ヒロインが好きになるのは優しくていつもそばにいてくれる幼馴染ではなく、ぶっきらぼうで不器用なクラスメイト。 体育祭の日 ヒロインは内藤に告白される。 ここで初めて、ヒロインは内藤に恋愛感情を持たれていることを知る。 幼馴染の関係を崩したくない そんな都合の良いことを言って泣き出すヒロイン。 こんな時にもヒロインを優しく慰める内藤。 ヒロインの五十嵐への気持ちに気づいていた内藤は、背中を押してヒロインを五十嵐の元へ送る。 内藤はヒロインが見えなくなった後、静かに涙を流す。 そんなよくある学園モノの恋愛小説の中で読者に名前すら知られないまま終わるヒロインのクラスメイトBの私。 誰にも知られないまま、小説の些細な一文にすらなれないまま、私の内藤への恋は終わった。 ヒロインの幼馴染、ヒロインとヒーローの仲を強くさせるための当て馬。 そんな報われないけれど全力で思いを伝える内藤の姿、それに読者は感動してまた話が奥深くなる。 そんな人格者は、小説の中の世界でも、外の世界でも、たくさんの人に好かれる、たくさんの人に慕われる。 私の好きになった人はそんな人気者だった。 彼に私の気持ちが届くことは無い。 誰かが私の彼への気持ちに気づくことは無い。 なぜなら私はヒロインのクラスメイトB。 そんな脇役の恋愛感情など、誰が知りたいと思うだろう。 誰が感情移入出来るというのだろう。 私が私として存在する限り、私の恋が実ることも、 私の恋が誰かに見つけられることもない。 理由は簡単。 私がヒロインのクラスメイトB 脇役だから。

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クラスメイトB

「先生と付き合える人は幸せだろうね。こんなに一途なイケメン初めて見たよ。」 高校2年の夏、屋内でもじんわり汗をかく程の暑さの中、私は言った。 「何、俺の事口説いてんの?」 にんまりしながらこちらを見る塩顔の大学生。私の通う塾の学生講師。いつも、誰に対しても、優しく、笑顔を絶やさない人。 私の好きな人。 クラスの女子が同級生の男子を好きになっている中、私が好きになったのは、2つ年上の大学生。加えて、私と彼の関係は教え子と講師。 相手にされないことは分かっていた。ただ、何もせずに終わるのは嫌だった。だから高校卒業の春、決心した。 「私、先生のこと好きです。もう教え子じゃないよ。一人の女の子として見てよ。」 明らかに困った顔をする彼を見て、微かにあった淡い期待が消え去った。 数分間の沈黙の末、彼は言った。 「大学に行ったら俺よりもかっこいいやついるよ。俺よりもお前に優しくしてくれるやついるよ。 お前のその感情は 好き じゃなくて、少し年上の男を見た 憧れ なんだよ。ごめんな。良いやつ見つけたら報告しろよな。」 「先生と違って私モテるから大学に入学したらすぐ彼氏作っちゃうからね!先生 女見る目ないね。」 空元気でそう答えた私は、意地でも涙をこぼさないよう、感情的にならないようにその場を後にした。 私と先生が同級生だったら何か変わっていたのだろうか。年の差が一年だったら好きになってもらえていただろうか。 どんなに私が先生を追いかけても、時の流れる速さは同じ。先生も同じ速さでどんどん進んでいく。 私と先生との溝が埋まることは決してない。 そう思っていた。 先生、私先生と同い年になっちゃったよ。 私が第一志望の大学に入学して半年頃、大学生としての生活に慣れてきた頃だった。親からの久々の電話で私は、初恋の人の訃報を知った。交通事故だった。 就活中の彼は面接会場へ行く途中、信号無視の乗用車にはねられた。 葬儀には行かなかった。行けなかった。現実を受け入れたくなかった。 どうして彼なんだ どうして私の好きな人なんだ そんなことを考えていたら気づけば2日経っていた。 大学の講義に出ない私を見かねた親友が私の家を訪ねてきた。 会話はしばらくなかった。 数十分経った頃、親友は私に言った。 「先生は何になろうとしてた人なの?」 「、、、、教師。私たちと同じ。」 それもそのはず、私が教師を目指しているのは彼のように生徒1人1人に真摯に向き合う指導者になりたかったからだった。 「、、じゃあさ、その先生の分もあんたが良い先生になるしかないんじゃない?先生ができなかったことしてあげられるのは今生きてるあんたなんじゃないの?」 親友のその言葉を聞いてからは、私は取り憑かれたように勉強した。 そして現在、あれから二年が経とうとしている。 私は教育実習や就活で息をつく暇もない状態だ。 今日も面接を受けていた。 面接会場を後にして私が向かうのは、地元にある小さな霊園だ。 規則的に並んだ墓石の中からかつての恩師であり、想い人の名が刻まれた墓石を見つけ、その前で立ち止まる。 花を供え、線香を添える。 「今日は面接行ってきたんだ。手応えはもうばっちり!死にものぐるいで勉強してきた甲斐があったよ。」 返事はない。 「ねぇ、、先生?私、先生と同い年になっちゃったよ。」 同い年になりたかったのはこういうことじゃなかったんだけどなぁ。 涙を堪えながら無理やり口角を上げる。 「先生みたいに笑顔を絶やさない人になるよ。それでたくさんの生徒に慕われる良い先生になるよ。私のこと見ててね。」 瞳から溢れた涙を拭いて私はその場を後にした。

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溝