築月千輝
5 件の小説恋は盲目
もうすぐ私はこの世界の形を、色を、動きを、そして、あなたの笑顔を忘れてしまいます。 私、あなたの笑顔が大好きなの。 だけどもう、これ以上、あなたと一緒にいることはできません。 怖いの。苦しいの。あなたの顔を見ることができなくなるって考えると早く忘れたいの。 わがままでごめんね。今まで愛してくれてありがとう。 幸せになってね。大好きでした… ぐちゃぐちゃな字で、ところどころ重なったり、傾いたりしている手紙。 目が見え無くなっていく彼女は、隣にいる僕にまだ気づいていないみたいだ。 なんでそうなるんだよ。 たとえ君の世界から僕が消えても、僕は君を愛し続けるのに… 目が見えないとか関係ない。だって、恋は盲目だろ? でも、伝えたくても伝わらない。 僕は彼女の声を忘れているから。
幸せな家族
幸せな家族ってなに? 夕食をみんなで囲むこと? 家族みんなで旅行に行くこと? 私にはわかんない。 勉強に運動に私が頑張らなきゃ。 この辛い日々から這い上がるために。 ママと妹を救うために。 でも、もう私も疲れたの。 毎日、あいつに仕事のストレスをぶつけられて。 毎日ママとあいつの喧嘩を勉強しながら耳にして。 いつのまにかあいつとの会話は、ごめんなさいと、次はもっと頑張りますになってた。 いつから?幸せってなに?家族って? 恋愛をしてもね、すぐダメになっちゃう。 だって、こんな家庭で育った私に幸せな家庭なんか築けないでしょ? だから終わらせる。 さようなら。大っ嫌いなお父さん。 私は、死ねと何度も叫びながら心臓を何度も何度も刺した。 ママ、妹幸せになってね! これでやっとみんなと同じ幸せな家族だ。 そうだよね…?
あなたの夜が明けるまで
壊れていたのは世界でしょうか? それとも私だったのでしょうか? 嘘で作り上げた世界でごめんね? それでも、あなたに生きててほしいの。 あなたが私を思い出すまで何度だって歌 うわ。 またいつか光の降る街を手を繋いで歩きましょう。 空の青さも忘れるなんてあなたはバカね。 脳腫瘍の影響で記憶を無くしていくあなたはこの世界を忘れていってる。 すぐにどっかに行ってしまうから、この病院にとじこめたの。ごめんね。 勝手でごめん。それでも、私はあなたを愛しているの。 知ってるの…どうにもならないって。 だけど今日も歌い続けるは。自分のために。
花嫁
白いドレスに花の冠。 あぁ、やっとこの日が来た。 白い肌の君に色とりどりの花が生きてとっても綺麗だ。 一生の愛を誓うよ。 涙の雫が彼女の頬に落ちる。 よくここまで頑張ったな。 おやすみ。 永遠にねむる花嫁に誓いのキスを。
恋透明
“透明な世界で2人愛し合えるさ” 透明な君は僕の手を引いていた。 “好きだよ” 夏休みが始まってすぐの蝉が勢いよく存在を主張しだすころ、君は僕に言ったんだ。 僕はいつのまにか泣いていた。手に持っていた溶けていくアイスのことなど忘れ、ただただ目の前にいる“好きな人”を抱きしめていた。 たとえ難しい恋だとしても僕は絶対君を守ろうと思った。 だけど、現実はうまくいかなかったね。 なんでいつも君は平気そうな顔をするんだよ。なんで僕は気づけなかったんだ。 ごめんな。好きになってごめん。 僕のせいで…隠された上履き。ズタボロに引き裂かれた教科書。あざだらけの体。今なって気づいたよ。 僕たちは一緒だったんだ。 もう大丈夫。この世界に僕たちの恋は受け入れられなかったけど、透明な世界で2人愛し合えるよ。 透明な君は僕の手を引く。 君がいない夏休みが始まったばかり。僕は君がいる夏の空へと駆け出した。 “あいしてる”