羊肉

10 件の小説
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羊肉

羊肉(ひつじにく)です。 自分が思ったことを気ままに 投稿しています。 自分の投稿が 誰かの心に伝わりますように。

ナイトルーティン

窓の外をふと見ると、もう夜がふけっているような五時の景色が 飛び込んできた。 −もうこんな時間か、と思いながら机の上の原稿や 乱雑に散らばった筆を片付け始めた。 一通り片付け終わった後、湯を沸かして茶を淹れる用意をする。 骨董品店で買ったこだわりの硝子製の急須に、知人から貰った 珍しい色味の茶葉をひとつまみ。 途端に透明だった湯に春の花が咲き誇るように美しい色が 広がった。 茶葉の色が完全に広がってから数秒蒸らすのが私流だ。 昨日街角で聴いたうろ覚えの曲の鼻歌を歌いながら茶を注ぐ。 さぁ、茶が冷める前に夕飯の支度をしよう。 …といっても昼食を食べ過ぎた私には茶碗一杯の白米でも十分 だな。まぁ、こういう時こそ少しばかりの贅沢をしたくなるのが 人間という生き物なのだ。 −…あぁ、昔に食べた『はにぃとぅすと』やらが食べたいな。 記憶だけで作ってみよう。 正方形に切ったパンを、トースターで少し焼く。 その方がふっくらとして美味しいはずだ。 少し温まったパンに、蜂蜜をたっぷりとかける。 蜂蜜の黄金色と、パンの小麦色が混ざり合って、食欲をそそる 狐色になった。 最後にバターを乗せれば、見よう見まねで作った 『はにぃとぅすと』の完成だ。 夜空色のテーブルクロスの上には、狐色のはにぃとぅすとと、 綺麗な色味が何重にも重なったような複雑な色味の茶、 そして金色のナイフとフォークが、パレットに置かれた 絵の具のように鮮やかに輝いている。 さぁ、実食といこうか。 ふかふかのパンをナイフで切り分けて、皿に垂れた蜂蜜を 絡めたら、ひょいと口に放り込む。 と同時に甘く甘美な味が、じゅわっと口の中に溢れる。 −うん、美味い。 当たり前のことを思いながら食べ進める。 この茶も、すっきりとした味わいで、甘ったるくなった口の中を 洗い流してくれる。 こんな何もない日でも、美味いものを食べれば特別な日に なり得るものだ。 食事を終え、風呂に入った私の前には、先ほどのはにぃとぅすとの如く、ふかふかのベッドが待っていた。

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ナイトルーティン

理解者

私は、学校が嫌いだ。 別に嫌がらせを受けているわけでもないし、 いじめられているわけでもない。 テストや成績が悪すぎるわけでもなく、 友達がいないわけでもない。 それでも学校に行くのが辛い。 クラスでは、いわゆる「スクールカースト」が起きている。 生徒たちの間で、「人気者」「人気者の友達」「普通の人」 「人気者に気に入られてない人」に分けられる。 カーストによって、友人関係が変わり、地位がつけられる。 私のカーストは最底辺だった。 「話しかけても無視される」「話しかけるとキレられる」 「何をしてもケチをつけられる」といったお決まりのやつだが、 私には辛くて仕方なかった。 そんなクラスにも、唯一と言っていい理解者がいた。 その子の名前はAさん。カーストは私と同じ最底辺だ。 ちょっと変わっているな、と思うところが少しあっても、 優しくて正義感の強い性格だった。 私は、Aさんと学校生活を送った。 話す、一緒に移動する、同じテーブルで着替える… どれも当たり前だったが、私には夢のようだった。 やがて、カーストが私たちよりも上の人が話しかけてきたり、 一緒に話すようになった。 しかし、そんな生活にも転機が起きた。 Aさんの友達、Uさんが学校に来なくなってしまったのだ。 私は、Uさんとも仲が良く、3人でよく遊んだ仲なので、 心配になってAさんに事情を聞いた。 Aさんはこう言った。『複雑な事情がある』 それからしばらく、Uさんは学校に来なかった。 ある朝、Uさんが学校に来た。 私は嬉しくなって、いろいろなことを話した。 しかし、このことはまだ終わらなかった。 Aさんが学校に来なくなってしまったのだ。 そして翌日、Uさんはみんなの前でこう言った。 『ふとしたトラブルからAさんと 殴り合いになり、お互いにひどい怪我を負った。 その喧嘩は学校沙汰になり、Aさんは不登校になった』 そう言われた時、私は悲しみに包まれた。 そんな状態で、Uさんはこんなことを言ってきたのだ。 「これからは、Aさんと仲良くしていくのは難しい。私とAさん、どちらかと仲良くするか選んで欲しい。選ばれなかった方は、 二度とあなたに話しかけたいだろう。」 なんて残酷なことだろう。なんて冷酷な選択だろう。 その話をしてから、まだAさんは一度も学校に来ていない。 Uさんが持ちかけてきた選択にも、まだ返答していない。 毎日、ただ、窓際の席で斜め上のAさんの席を眺めるだけ。 授業を受けていても、給食を食べていても、 友達と話している時も、 頭の中にはAさんがいる。 寂しくて、辛くて、死んだほうがましだって 毎日毎日思って。 でもいざ死のうと思っても、怖くて死ねなくって。 そんな毎日を、ずっとずっと送ってる。 いつか、Aさんが帰ってきてくれますように。 そう、ずっと、願ってる。

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理解者

金木犀の秋へ

外に出ると ふわっと金木犀の香りに包まれる どこに金木犀の木があるのか わからないけれど どこか幸せな 気持ちになれる 外に出ると ふわりと秋の香りに包まれる どこからくるのか わからないけれど 色づいたような 気持ちになれる 外に出ると はらりと落ち葉が舞い散る どの木の葉っぱか わからないけれど 秋だなぁって 気持ちになれる

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金木犀の秋へ

空腹

私は、今、空腹だ。 何処かの童謡の歌詞にあったように、 腹と背がくっついてしまいそうだ。 とにかく、何かを食さなければ。 ちょうど戸棚にあったパンを数個食べる。 「まだだ…」まだまだ空腹は収まらない。 冷蔵庫に入っていた昨日の晩飯の残りを平らげる。空腹のあまり、冷蔵庫の中に入っていたものは全て食べてしまっていた。 まだだ…まだだ…まだ足りない。 腹が空きすぎて気持ち悪い。 何が食べたい?何を食いたい?なんでもいい? ………肉だ。 肉が食いたい。 手にナイフを持って外へ出た。 この話は、「BUTCHER VANITY」という曲を 参考にして考えたものです。

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空腹

真逆

正解と不正解 嬉しいと悲しい 公平と不公平 幸福と不幸 お金持ちと貧乏 男と女 子供と親 陽キャか隠キャか 晴れ男か雨女か 猫派か犬派か チビかデブか イケメンかブスか いじめるかいじめられるか 善意か悪意か 正義か悪か 戦うか殺されるか 生きたいか死にたいか

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真逆

歪んだ愛とあの子 2 薬

薬を打ってからもあの子はずっと寝続ける。 その寝顔も愛おしくて笑みが溢れてくる。 これで君は私のものだ。 これからもずっと一緒にいれる。 もう苦しい思いなんていらない。 ずっと私だけどいればいい。 打った薬の正体は、一度打つと常人の生活ができなくなるような 違法薬だった。 インターネットで思ったよりも安く手に入れることができた。 あの子は私無しじゃもう生きられない。 でもそんなところも可愛くて。 もうまともに喋れないと思うけど、私の名前は呼んでくれるよね。 もう少しで私はこの家を出て孤立する。 これであの子も幸せだ。 ーーーーツーーーーツツーーーーーーー。 『今日のニュースをお伝えします。 ○県○市、○○学校に通う女子生徒、 ○○○さんが行方不明になっています。 現場によりますと、○日にどこかへ向かう○○○さんの姿が コンビニの監視カメラで録画されていましたが、どこへ行ったのかは消息不明です。○○○さんと思わしき人物を見かけた場合は、 警察への連絡をお願いします。』ーーツーーー 後日、あの子のことがニュースになっていた。 あの子はしばらくして目を覚ましたが、薬の効果でほとんど 寝たきりになり、何も考えられない。呂律もほとんど回らない ため、私の名前を呼ぶ声と言葉にならない声しか出せない。 そんなあの子が可愛くて、ずっと声を聞いていたいけど、親に 見つかると危ないため、口枷をつけている。 今日は卒業式だ。あの子に「行ってきます」といって 家を後にした。 卒業した後、私たちは“2人”暮らしを始めた。 新しい家は一軒家で、人があまり住まないところにある。駅から 遠いためか、かなり広いのに家賃は安い。 もちろんあの子のための部屋もあの子専用のベットもある。ただ、私がそばを離れると泣き出すため、 私の部屋はあの子の部屋の隣だ。 あの子にぴったりな天蓋ベットと、桃色のフリルの付いた ネグリジェは、あの子のために作られたようによく似合う。 あの子は行方不明者になってるから、テラスで小さなお茶会をして気分転換させている。 綺麗な蝶がそばにくると腕を揺らしてにこっと笑う。そして呂律の回らない口で「ちやうちょ」という。 ああ、やっぱり可愛いな。 この幸せがずっと続きますように。

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歪んだ愛とあの子 2 薬

歪んだ愛とあの子

私には好きな子がいる。 初めて見た時から好きになったが、趣味が合ったこともあり、 今では大親友と呼べるような仲になった。 友達から恋愛対象となるのはよくある話だろう。 私の友人も何人かはそうだった。 それまでは私も普通の恋だと思っていた。 それまでは。 あの子から告白されたのだ。 少女漫画や小説でよくある告白方法だった。 私は迷わずOKを出した。 あの子はとても幸せで満ちた顔で帰って行った。 家に帰ってからもあの子のあの顔が脳裏から離れない。 幸福とも何とも言えない感情が溢れ出す。 これが普通の感情なのだろうか。 付き合ってからずっと、私の中でどす黒い 感情が湧き上がってきていた。 卒業が近くなるまでその感情を放置してきたが、 ついに膨れ上がった感情が溢れ出した。 今まで貯めてきたバイト代もお小遣いもお年玉も全て注ぎ込んで、私はあるものを買った。 薬だ。 その薬を使って私はある計画を実行することにした。 その計画は、不確で、危険で、絶対にしてはいけないことだ。 でも私にはその計画を実行すること以外頭になかった。 ○月○日、あの子に私の家に来ないかとメールする。 返答はもちろんOKだった。 今日は家に親はいない。あの子も思春期で親との折り合いが悪く、おそらくどこに行くかなど連絡していないだろう。 あの子が家に来た。私の部屋で他愛のない話をする。話している間もあのどす黒い感情は私の心を蝕んでいる。 しばらく話したあと、あの子に茶菓子と紅茶を振る舞う。 私に感謝したあと、あの子は美味しそうに茶菓子を食べ、 紅茶を飲んだ。 紅茶の中には、睡眠薬を入れていたのだ。 あの子は何も知らずに飲み干す。 程なくしたあと、あの子は「眠たくなっちゃった。 一緒に寝ていい?」と言った。 この瞬間をどれほど待ち望んだだろうか。 あの子と一緒に寝る。いや、寝たふりをする。 あの子が熟睡したことを確認し、私は黒い箱から薬の入った 注射器を取り出す。 そして注射器の針をあの子の首に刺した。

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歪んだ愛とあの子

オルゴール

私はオルゴールの音色が好きだ。 ぽろろんぽろろんと響く音は、私を懐かしい気持ちにしてくれる。 ぽろんぽろんと流れる曲は、私を励ましてくれる。 ちょっとひび割れたような音も、年期が経っていて私は好きだ。 読書の時は静かに心弾ませ、悲しい時は暖かく寄り添ってくれる。 今日もこの小説を、オルゴールの音色ともに心に届ける。 そんな毎日が、私は好きだ。

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オルゴール

通学路アルバム

友達と遊んだ帰り、ふと小学校の時の 通学路が目に入った。 自転車に乗りながら、通学路を通っていく ことにした。 自転車をこぎ、秋らしくなってきたそよ風を 全身に受け、懐かしいあの頃を思い出す。 「この十字路の真ん中でよく友達と 立ち話したなぁ」 「この石の前でよくこけて泣いてたなぁ」 「ここの花にとまってた蝶々、すっごく綺麗 だったなぁ」 そんなことを思いながら進んでいると、 優しく吹き続ける生暖かい秋風が、 あの懐かしい日々のように思えてきた。 6年間、なんとなく通ってきた通学路が 思い出アルバムになるなんて、小学生の 私には思うこともなかっただろうとしみじみ思う。 なんでだろう、コンタクトレンズをつけているせいか、 いくら拭っても目から涙がこぼれ落ちていた。

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通学路アルバム

記憶

記憶はね 絵の具みたいで 最近の色はよく覚えてるけど 時間が経つにつれ どんどん色褪せて ほかの色と混ざり合って いつしか元の色がわからなくなって でもね 色褪せても ずっと記憶には残り続けるの あの時の あの人の あの色も 混ざり合っても 残ってるよ 覚えてるよ

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記憶