流木の償い
これはどこから来たのだろうか?
そう思いを馳せながら私は流木に埋まった海岸を片づける。
するとひとつ、面白い形をした流木が目にとまる。
自然物であるはずの流木にしてはどこか人の気配を感じさせる、そんなものだった。
どこかの工芸品なのだろうか、とすればそこに宿る思いはどんなものだろうか、流れ着くまでに無くしたであろう飾りたちはどんなものか。
退屈な片付けをしながら想像が膨らんでいく、これが私にとって唯一の娯楽と言えるだろう。
この掃除は私の仕事というか義務のようなものだ。負うべき責任を果たしているだけなのだ。
あの美しかった海岸を台無しにしてしまったのは他でもない私なのだ。
この場所にも、ここを楽しみにしていた人達にも、悪役になってしまった流木たちにも申し訳ない。
だから償いを贖いを、こんなことなんかで全て元通りに、なんて考えてはないけれど。自己満足で終わってしまっても。
やらなければならない。
始めてから明らかに流れ着く流木が増えている。
一つ除く間にみっつ、よっつは辿り着く。
青く爽やかだった海は少しずつ濁り始め、白く心地よかったはずの砂も穢れ始めた。
私のせいなのだろうか?
加害者の憐れみなど不必要だというのか?
だからといってもやめるわけにはいかない。
私はこうする以外に償う方法を知らない。
ただ許しを乞い、やり続けるしかもう私には残されていない。
どうか続けさせてほしい。
もう耐えられない。
私が何かをするたびに何かが壊れていく。
流木にとどまらず、ゴミまで次々と流れ着いてくる。
海は取り返しのつかないほど黒く染まり、砂は一粒も残っていない。
どうしてこうなってしまったのだろうか。ただひたすらに海岸を取り戻したいと願っていただけなのに。それだけなのに。
やっと気づけた。ずっと目を背けていた。加害者にできる償いとは、埋め合わせでも謝罪なんかでもない。
ただ死ぬことだけだ。これで全て元通りだ。私は間違っていたのだ。これでいい。
素晴らしい選択をした。
数年後も海は依然として汚されたままであった。
しかし幸運といえるのは、
海が美しい青を取り戻したことだろうか。
沖合にはまだ多くの流木が浮かんでいる。悪役であることは変わらない。
祈りは通じていなかった。
ひとつ、流木にしては異質な何かが浮かんでいる。あんなもの吐き出してしまえば良いというのに。
海はどこか穏やかな笑みを浮かべている。