ケチャップ

5 件の小説
Profile picture

ケチャップ

普段はトリオでお笑い芸人してます。 物語を書く練習として日々投稿していきます。

ヒーロー

全く、何やってるんだあいつらは、集合時間とっくに過ぎてるよ、遅刻だよ遅刻。 すいませ〜ん! おせぇよ!何やってたんだ! すいません!僕も今から急いで支度して… もういいよ。 え? もう終わったよ。 終わったんすか?結果は? 勝ったよ あ〜良かった。 良かったじゃねぇよ、お前は絶対に遅刻しちゃならねぇ職業なんだよ! はい!すみません! 今後こういうことが無いように、今一度自分の職業を胸に刻み込め!お前の職業はなんだ! ヒーローです! そうだろうが!!絶対に許されないんだ遅刻なんぞは。 でも総司令! ん? ヒーローは遅れてやってくるっていうじゃないですか! 本当に遅れてどうすんだ!それじゃ困るんだよ。そういえば遅れた理由を聞いてなかったな。 はい、あのちょっと電車が遅れてしまいまして…。 電車乗んなよヒーローが。ヒーローだったら家からワーって飛んでこれるだろ! でもあれ結構疲れるんすよ 知らねぇよ。 闘い前に疲れるのはちょっとアレなんで、電車で来ました。 ほんで体力温存した結果間に合ってねぇじゃねぇか。本末転倒だよ。 はい、すみません。 すいません!遅れました! 来た来たやっと…おせぇよ! すいません! コイツもですか?? そうだ、今日は本来3人の予定だったんだ。まぁそれはいい遅刻だぞお前! でも総司令! ん? ヒーローは遅れてやってくるって… 聞いたよさっき!そいつから! でも聞いてください総司令、電車が遅延してたんです。 お前もか…。 それって47分着の電車? あ、そうそれ! あ、じゃあ一緒の電車でしたわ! ちょっと待て、なんで一緒なのに到着時間に差があるんだ? チャージ残高足りなくて、改札引っかかっちゃったんですよね、それで。 金ないヒーローか…夢ねぇな。 お言葉ですが、総司令、遅刻って言っても僕3分ですよ? あのな、今日お前らと一緒に闘うヒーローなウルトラマンさんだったんだよ。あの人必ず3分で決着つけるだろ、お前が改札でティンローンってなってる時、あの人敵と闘っててピコンピコンなってたんだよ、それでもギリギリで勝ったんだよ。 そうだったんですか…。 だからもうお前ら帰れ、電車で帰れ。 失礼します あ、総司令 なんだ 帰りの電車賃貸していただけます? 飛んで帰れ!!

4
2

カクリツ

金が無い。 とか思っているとより減りそうだから、考え方を変えよう。 金が少しはある。 こちらの方がポジティブな言葉で終わっているから少しはマシだろう。 なんてことを並びながら僕は考えていた。 全くいつまで並ばされば気が済むんだ、きっと周りの人も思っていることだろう。 先週の金曜日、アルバイトの求人ページに目をやるととんでもなく高額なアルバイトを見つけたのだ。 「日給 4万円、拘束時間 1~2時間程、集合時間 朝10時、集合場所 〇〇、仕事内容 集合場所にて説明します。」 これを見たとき2つの考えが同時に頭に浮かぶ。 最高じゃん、でもなんか危なそう。 美味しい話には必ずウラがあると、まず誰しもが思うだろう。 ただこの時の僕は違った。退屈だったし、ついさっきこういった展開から始まる、ものすごく面白い映画を観たばかりで、自分をその映画の主人公に投影していた。 応募するのにそう時間はかからなかった。 それが先週の出来事。後悔はしていないといったら嘘になるだろうか。 もうかれこれ1時間半は待たされている。 約束の拘束時間は残り30分のはずだ。 過ぎたら文句を言ってやりたいが、そういう性分では無いので、誰か言ってくれやしないかと思っていた。 ふと気がつけば、自分の後ろに長蛇の列が出来ていた。 「え、これ全員、求人サイト見てきた人か?こんな大勢の人がいて1人40,000円も支払えるのか?」 いつのまにかそんな考えなくてもいいホスト側のことまで考えていた。 すると前の方で何やら動きがあった。 職員のような人から封筒を手渡され、並んでいた人々が解放されていく。 え、もうこれで終わりなのか?そうなのか?やった! ただ解放されていく人々はみなしきりに封筒の中を何回も覗いている。 そんなに金に困っているのか。そんなことを思っていると、徐々に自分の番に近づいてきた。 職員らしき人が来て、何も言わずに僕に封筒を手渡す。 ちょっと気を悪くしたが、まぁ派遣バイトなんてこんなものかと思い封筒を開ける。 封筒を逆さにして一万円札四枚を手に取る、と同時に二つ折りの紙がコンクリートの地面に落ちる。 拾いあげて見てみると何か書いてあった。 (お疲れ様でした。今回のこのバイトには251人もの人に参加していただきました。 皆さまには一律40,000円お配りしておりますが、その金額は今回の参加者251人のうちから1人ランダムに選出させていただきまして、その方から頂戴いたす所存です。 その方にはこの用紙と別にもう一枚入っておりますのでそちらの案内にしたがっていただきたいと思います。 今回はご参加いただき誠にありがとうございました。またのご参加をお待ちしております。) 僕は封筒を覗く気にはなれなかった。

4
2

思考

先生が口を開く、皆さんは教室と言われて何を思い浮かべますか? 数学の田中先生が、僕ら生徒に問いかける。 その時僕の頭に浮かんだのは、このまま雑談でなるべく授業が潰れてくれたらいいと思っていた。 その時僕の斜め後ろの席に座っている優等生の中野さんが手を挙げる。 「勉強です。」 それは暗に早く授業を始めてくださいと言っているようなものだった。 「そうですね、他にありますか?」 ナイス先生、そう心の中でガッツポーズ。 そこからは様々な意見が出た。 「学生」僕らのことか、「黒板」大きいし目立つからな、「黒板消し」イタズラとかするしな、「チョーク」黒板に引っ張られすぎだ、「女王」女王?あぁいつかやってたドラマか、「ロッカー」後ろで存在感あるな、「箒とちりとり」ロッカー開けたな、「机と椅子」机の上に椅子逆さにしてあげてな、「雑巾」椅子の足拭くんだよな、「給食」掃除じゃないのかよ!! 生徒が一斉に僕の方を見た。

4
2

捉え方

僕の彼女は素晴らしい考え方の持ち主である。 あと数時間で彼女の誕生日が終わろうとしていた。 蒸し暑い夏の日で、行くあてもなく歩き回り汗をかいていた。 僕は早く今日中にプレゼントを渡さなければと。 別に誕生日当日に渡さなければいけないなど、誰が決めたわけでもないルールに縛られ1人焦っていた。 冷や汗をたくさんかいていた。 僕の異変に気づいた彼女が、「どうしたの?これからまたどっかいくの?」と聞いてきたので、今だ、と思い立ち止まったそこは歩道橋の上。 はぁ、なんでここなんだと思ったが、立ち止まったのなら何かしらの理由がないとおかしいだろう。 ただ、僕の人生で歩道橋で立ち止まる理由はどこを探しても見つからない。 もう仕方ない、ここで渡そう。 不思議そうに見つめる彼女にそっとプレゼントのネックレスを手渡した。 彼女はとても嬉しそうに付けてと僕にせがんだ。 僕に背を向け嬉しそうにする彼女に向かって、「こんななんでもないところでごめんね、もっと特別な素敵なところで渡してあげたかったんだけど…」そう僕が言い終えると同時に彼女は僕の方を振り向きこう言った。 「ううん、これでいいの。だって特別な場所は、どんな事をしていたって特別でしょ? でも本来このなんでもなかったはずの場所が、君のおかげでこんなにも素敵で特別な場所になったんだよ。だからこれでいいの。」 とても嬉しそうに笑う彼女をみて僕も微笑んだ。

3
0

光と闇

はぁ どうしたため息なんかついて もう嫌になったんです 何がだ 自分はいかに世間知らずで狭い世界で生きていたかを思い知ったんです 俺でよければ話してみな はい、正直自分って意外と頑張ってるし、そこそこ仕事出来てる、社会に貢献してるって思ってたんです。 ほう あ、僕25歳なんですけど、周りの友達も同じく社会人として働いてるんですけど、話を聞くと全然置かれている状況が違いすぎるなって。 どういうことだ? もう既に部下がいて育成をする立場にあったりとか ほうほうほう 何度も転職して自分に合う職業を見つけて楽しくやってる奴とか ほうほう 合わないと思ったら今勤めている会社をすぐに辞めて、自分で起業したりしてる奴もいて。 ほう 未だに何の役職も立場もなく日々平社員として過ごしている自分がどうにも情けないんです、自分はそれなりに苦労しているつもりだったんですけど、蓋を開けてみたら皆言ってないだけで全然自分より大変だったんです。 … そんな自分がもう嫌でそれで… あのな はい。 次おっちゃんのターンでも良いか? はい。 さっきから話聞いてると、兄ちゃんは他人を羨む発言が多くみて取れるな はぁ それとマイナスな言葉が多い、マイナスを撒き散らすのはプラズマクラスターだけで良いんだわ はぁ 自分はどう思う? 確かにそうかもしれません。自分には闇があるんです、しかも底が見えない程暗くて深い闇。それに比べて僕の周りの友人達は日々明るく楽しそうに過ごしているんです。闇なんか一切無い様に思います。 なるほどな、兄ちゃんは自分だけでなく周りのことも視えなくなってしまってるなぁ。 というと? 人間誰しも闇を抱えてるもんさ、兄ちゃんの周りの友達も。もしかしたら兄ちゃんよりも深くて暗い闇を抱えてるかもしれない。 彼らが? そうだよ?でもそんな彼らと兄ちゃんの決定的な違いがあるんだ。 何ですかそれは? さっきから思ってたけど、すぐに答えを求めず少しは自分で考えたらどうなんだ… すみません まぁいいや、それはな彼らはその闇が見えないくらい強い光を纏って生きているんだよ。 はぁ。 だから俺が言いたいことはな!闇が多い人間程、その分光も沢山あるってことだ! 強い沢山の光を浴びせられたらその分、影も出来るんだよ、でも兄ちゃんは今その影、闇の部分を向いて生きていて、今自分に当たっている光から目を背けているんだよ。過去の闇ではなく、将来の光に目を向けるべく振り返ってみな。最初は少々眩しいがそのうち慣れる。頑張れよ。 10月のある日のこと。

4
2