萊 稡 .

4 件の小説
Profile picture

萊 稡 .

文系女子が書く小説 ఽ✍🏻 fanマーク :) ☁️📧

🪧 𝐩𝐫𝐨𝐟𝐢𝐥𝐞

お久しぶりです🥂‎🤍 そういえば自己紹介していなかったので今回この場をお借りして自己紹介をしようかと思いまして☁️♡ 名前 : 萊 稡 . 読み方 : らいせ 年齢 : 中学生 住み : 大阪府 誕生日 : 8月18日 性格 : マイペース 趣味 : 読書 睡眠 写真撮影 音楽聴く 小説を描く 推し : なにわ男子さん HiHi Jetsさん 同担様welcomeです🤞🏻💕 fanマーク : ☁️📧 好物 : 綿飴 オムライス 苺 質問御座いましたら💬にて返答します🙋🏼‍♀️ 良ければ仲良くしてください 🙇🏼‍♀️🙇🏼‍♀️

1
3
🪧 𝐩𝐫𝐨𝐟𝐢𝐥𝐞

大雨注意報、君注意報

大雨注意報が出てるから外出るの気をつけてね。 「うん」 心配そうな顔をしながら妹の面倒を見るお母さんに大丈夫だから。と言い 傘もカッパも持って外に出る 「うう、さむ」 頑張れば傘でも行けるかな。なんて考えながら 早歩きでスーパーへ向かう 今は母、自分、妹の3人で暮らしているから母の代わりに私が買い物へ行くのは日常茶飯事だ 4月から小学生になる妹はまだ幼いのに1度も父親を見たことがない 離婚したんだとさ、 そこから女手ひとつで育てている母には感謝でしかない スーパーの自動ドアが開く ささっと済まそうと思ってメモを見ながら買う 傘に付いている袋を取ってゴミ箱へ捨てる これ意外と好きなんだよね。 「あれ、白石?」 「中川くん」 「白石もおつかい?」 「うん。」 俺もだよだなんて言いながら買ったばかりの炭酸を振る彼 多分パシられたんだろうな ちらっと開いたままだったスマホの画面を見る 新着ストーリーが数件、 適当に1番前に出てきたクラスの男の子のストーリーを開く 「あー あいつストーリーあげやがった」 ……ナチュラルにスマホ覗くじゃん 「なんで?」 「あいつらと人狼してたら負けてさあ」 「んで、パシリの炭酸買いに来たわけ」 その子のストーリーが上がったのはもう20分ほど前 きっと天気予報も見てないんだろう 「いま大雨注意報出てるよ」 「え? マジで言ってる?」 案の定見ていなかった彼は帰れるかなと交通状況をスマホで確認している 「じゃあまた明日」 「んー気をつけて帰れよ」 そう言い手を振る彼を背中に傘を開く 行きよりも風が冷たい。 これは明日学校無くなるかも、 そんな期待に胸を膨らませ 足を早めた 昨日が嘘だったかのような晴天 一応天気予報も確認するけれど 台風は予定順路から南へ逸れたそう。 “行ってきます” って3回言って 右足から家を出る 誰かから聞いた恋のジンクス 柄じゃないし、好きな人だっていないけど 自然とこれが流行っていた時の癖でやってしまう 「志穂おはよう〜」 「うん。おはよう」 「あ、ねぇ昨日雨ヤバくなかった?」 「ガチで吹っ飛ぶかと思った〜」 「りりちゃん、そこ毛虫居るよ」 「うわあ!? 」 「ガチ無理ガチ無理…」 そう言いながら私の後ろに隠れるりりちゃんは私より一回り縦も横も小柄。元気でフレンドリーだしみんなの愛されキャラ んでわたしの1番の親友 「志穂、今日は駅前で食べ歩きしない?」 いいね。と言いながら丁度よさそうなお店を調べる 性格こそ正反対だが 、趣味も好きな食べ物も同じな私達は相当気が合うだろう 「白石!」 「ん?あれ中川くんじゃん。志穂仲良かったっけ?」 「昨日たまたまあっただけだよ」 「なんかいい雰囲気だから先いくね」 走って他のクラスメートの元へ行くりりちゃん。 「昨日ありがとな」 「へ? 何に対して?」 「え? いや大雨注意報出てるって教えてくれたじゃん」 「なんだ。そんなことか」 「気にしないで」 「にしても昨日あんなに天気悪かったのになんで今日はこんな晴天なんだろうな」 「…わかんない」 「あー、だよなぁ」 「英語の課題やった?」 「一昨日?の授業中に終わらせたよ」 良くしゃべる人だな。 ずーっと一方的に話してるよ 私、反応悪いのに 「なんか、中川くんってりりちゃんに似てるね」 「そう?俺的には白石と瀬戸が似てる気がするけどな」 「んふふ、ありがとう」 昨日も思ったんだけど中川くんの隣に立つと落ち着く あれれ、 もしかしてこれが恋? 「りりちゃんやばい!」 「恋しちゃったかも」 「へ?」 伸びていた前髪を眉上まで切って 横髪を作って お菓子を我慢して 中川くんとSNSを繋がって 私なりに努力しました。 「中川くん、ちょっといいかな?」 「ん?どうしたの?」 「私君が好き」 「…俺も好きなんだけど、」 「じゃあ、付き合ってください?」 「お願いします笑」 「マジか…ちょー嬉しい」 「私も嬉しいよ」 「志穂ちゃんって呼んでもいい?」 「うん。もちろん」 大雨にも、君にも注意してください。 溺れますよ

2
2
大雨注意報、君注意報

暗号恋愛

あなたの気持ちだけが 永遠に解けない謎だったの。 * 「今度はこれ!これはどう!?」 私へ駆け寄ってくる彼は子犬そっくり 「この暗号は流石に解けないでしょ?」 「んーなんか解けそう」 「ええ!?」 騒がしい彼を横目に私はグラウンドを覗く 窓際の席で彼と前後になれたのはきっと私の運勢全部使い切ったと言っても過言では無い 「わー!三浦の弁当やっぱめっちゃ美味しそうー!!」 「三浦ママ天才すぎる」 「ありがとう。自慢のお母さんなの」 純粋な気持ちでお弁当を褒めれくれる彼を見ていると自然と私まで笑顔になれちゃう お母さんは元から手先が器用で料理をするのが大好きだから毎日被ることなく素敵なお弁当を作ってくれる。 そんなお母さんは唯一私の自慢できる人 「三浦?」 「んー?」 「凄い考え込んだ顔してたけど大丈夫?」 「あーちょっとボケーっとしてた」 「そ、なら大丈夫か」 「てっきり俺の暗号が解けなくなったのかと思った笑」 「髙橋くんの暗号規則性ありすぎてわかりやすい笑」 「へ!うそ!?」 「ほんとほんと」 「でも俺いつかは三浦でも解けないような問題作るから見てなって!」 「はいはい笑」 * 「あさちゃん帰ってたの?おかえり」 家の扉を開けたら急に声をかけられてびっくりする 「ただいま」 「お母さん今日もお弁当ありがとう」 「もーあさちゃんほんとにいい子なんだから、、」 「学校はどう?楽しい?」 「まあぼちぼちかな」 「じゃあ仕事行ってくるから戸締りして寝といてね。おやすみ」 「おやすみなさい」 お父さんは去年亡くなった 交通事故だった 一途なお母さんは女手1つで私を育てるつもりらしい お父さんの分も私のことをいつもにまして愛してくれてるし お弁当や行事にはいつも来てくれていたのに心の中にぽっかり穴が空いたような気持ちは1年経っても報われない * 「三浦ってさ」 「下の名前なんだっけ?」 「..朝妃」 朝妃だなんて綺麗な名前は私には勿体ないし自分の名前が苦手 「えー!三浦に似合ってて超いいじゃん!」 「朝妃って呼んでいー?」 髙橋くんの少し強引で、でも本心をしっかり言ってくれる所が私にはない所で尊敬 だから、 「いいよ。私も颯太くんって呼ぶね」 「え?朝妃?」 「なんでここに」 * “夕妃と朝妃” そうやってまとめられるのが大嫌いだった 朝妃は名前の通り明るくて愛されキャラなのに、 私はいつも“朝妃の姉”としてじゃないと話しかけて貰えなくなった 夕妃の名前は可愛いのに性格きついよねとかいう理由で友達は減ったし 挙句の果て 「ごめん、俺朝妃のこと好きになったから別れよ」 だなんて長年片思いしていた彼からは振られるし もちろん朝妃のことは大好きだった だから 私を利用して朝妃に近づく人が大嫌いだった そして、そんなことも見破れない八方美人の朝妃が羨ましくて妬んだ そんなんだから朝妃から嫌われてるって分かっていた 急に避けられたことにショックを受けた朝妃が自分に自信を無くしたのも 全部私のせいだって分かっていた * 「朝妃。彼氏?」 「いや・・」 「そ。ならいいや」 「またね朝妃」 “朝妃に男絡みは必要ないんだから” 「・・・!!」 「朝妃、あれ、どちら様?」 「あーやっぱ気になる?笑」 「お姉ちゃんだよ。2-Bの三浦夕妃先輩」 「朝妃ってお姉ちゃん居たんだ」 「そーそ。」 「あ、颯太くん昨日の暗号解けたよ」 「へ!うそ!?ほんとに解けちゃったの!?」 「もちろん笑」 お姉ちゃんの話なんてしたくなくて 無理やり適当な話を振る ごめんね颯太くん * 「颯太くん遊園地行こうよ」 そう誘ったのは12月初旬だった。 いつもは姉と見ていたイルミネーションを 大事な彼と見たかったから 「朝妃遊園地好きなの?」 「うん。大好き」 「いいよ!じゃあ一緒に行こー!」 だなんて快くOKしてくれる彼 詳しい日程をある程度決め、お風呂へ入る 湯船にかかった水面から 彼とのデート姿が浮かんできてしまう気がして頬が自然と緩んだ そりゃ、感が鈍いお母さんに 「あさちゃんが好きになった人ってどんな人?」 と聞かれるぐらいには。 お風呂から上がったらいても立っても居られない気持ちになり豪快にクローゼットを開ける 全部お母さんが選んでくれた ピンクの女の子っぽいワンピースや 大人っぽい白系の上下セットなど 色々引っ張り出してはベッドの上へ投げる 颯太くんのタイプはどれだろう 颯太くんが似合ってるって言ってくれるのはどれだろう お母さんがもし選ぶならどれだろう 考え出しても答えにたどり着けないようなことでグジグジして気づいたらもうそろそろ寝ないといけない時間になっていた 仕方なく全部クローゼットへ戻す 本当は薄々気づいていた。 きっと私は"髙橋颯太"が好きなんだろうって 颯太くんといる時間が1番楽しいって * 「朝妃ちょっといい」 そう姉に話しかけられたのは土曜日の昼間 「いいけどなに?」 自分から声をかけてきたくせに何も話さない姉に内心イライラしながらも訪ねてみると 「えっと、ごめんね?いままで」  避けていたことに対しての謝りなのか 自分のせいで妹が追い込まれていたことに対しての謝りなのか はたまた、何かまた違ったことに対しての謝りなのかは分からないが、負けず嫌いの姉が自分から謝ってきたのは初めてだし長い姉妹喧嘩ってことにしよう そう思っていた矢先 「前一緒にいた男の子にも謝っといてくれる?」 姉が言う“男の子”が誰なのかなんて考えなくても分かった 「なに、颯太くんに何したの?」 自分でも想像できないぐらい低い声が出た 「いや・・別に・・・」 そう言って責任逃れをしようとしている姉の手首をしっかり捕まえて再度尋ねる 「さっさと答えて。颯太くんになにしたの」 「全部朝妃が悪いんだよ」 そうぼそっと言う姉の胸ぐらを掴もうとした が、姉の声により止められてしまう 「朝妃には男絡みいらないって言っただけだし」 声を張り悲痛の叫びのような声を出す姉を背中に部屋へ戻る 妬みで颯太くんを傷つけた姉とはやっぱり分かち合えない気がする 姉はどうせ再来年にはこの家を出ていくしそれまでの辛抱だと思っていたけれど流石に我慢の限界。 明日は颯太くんとのデートなのにいい気持ちで明日を迎えることが出来ない自分にも嫌気がさした それでも当たり前に明日がやってくるようで 目覚めたら殴りたくなるぐらい清々しい青をした空 心地よい風 自然と私と颯太くんの関係を応援している様でなんだか照れくさい 「朝妃おはよう!」 そう言って小走りに走ってくる彼 世間的に見たらまあ割と普通な格好かもしれないけれど 好きフィルターがかかっている私にはいつもの倍かっこよく見える 「行こっか!」 「うん」 「朝妃!」 「んー?」 「これ乗らない?」 そう言って彼が指さしたのは遊園地定番のメリーゴーランド 穴場スポットみたいな遊園地だから待ち時間0分で案内された 待ち時間苦手な私には最高のお出かけスポットなこの遊園地に彼と来れてこの上ない幸せを再確認しながら適当に目の前にある馬に腰掛ける 周りをくるくる回りながらどの馬に乗ろうかと悩んでいた彼は私がもう座ったことに気づいて隣の馬に腰掛けた 「もう乗ってたなら教えてよー!選ばなくてよかったのに」 「ごめんごめん笑」 「お、朝妃のこと見下せるー!」 「・・・今は私の方が上だけど?」 「あと三秒後には俺の方が上だから!」 たかがメリーゴーランドにここまで盛り上がっていたからか降りる時には2人ともぐったりしていて 「お腹空いた・・」 だなんて言いながら2人顔を合わせて笑った まだ11時だけど軽く食べようと提案すると彼は予め調べていた(らしい) 可愛いクレープ屋さんのホームページを見せてきた どうやらクレープを食べたいらしい お化け屋敷の近くにあった気がする、という1年前のあやふやな記憶を辿りながら彼を案内する 「チョコバナナクレープと・・」 「朝妃何にする?」 「え?あ、いちごクレープにしようかな」 「いちごクレープ1つずつください」 「かしこまりました。少々お待ちください」 「颯太くん、注文ありがとう」 「いえいえ!」 田舎の遊園地のアトラクションを乗り尽くした時 ちょうど私の大好きなイルミネーションが開始する時間で 白色だった景色に 赤や青や紫や緑の色彩がじんわり溢れ出ている それを真剣に見る彼から 目が離せなくて 気づいたらイルミネーションは全てライトアップされていた きっとそんな颯太くんと目が合うのは自然なことで 鼻先がぶつかる数ミリの所に見える彼の顔 恥ずかしくて目を閉じた。そんな時だった 彼と私の影が重なったのは 何が起きたか分からない私を他所に 今あったことをなかったかのような素振りでイルミネーションを見ている彼 「いつかは三浦でも解けないような問題作るから見てなって!」 颯太くん 私が解けない謎あるよ “君が何を考えているか” キスは欲求でしたのか 私をからかっていたのか それとも 私と同じ気持ちなのか 颯太くんってずるいなあ 私が彼と会う度に疑問に思うことが増えてるって知ってるくせに * 短いようで長い冬休みが明け、またいつも通り学校が始まった 初日から忘れ物をする生徒に 「正月ボケすんなよー」 とツッコんでいる先生の声をBGMにうとうとする どうにも、明日学校ということが信じきれなかった数時間前の自分はとても夜更かししてしまったみたいで 数分間だけと復唱しながら重い瞼を光の速さで閉じる 自慢じゃないけれど早寝は出来ている私が寝ていることに対して先生も隣の席の子も誰もツッコまずに50分間も寝続けた 休み時間 「朝妃寝てたでしょ〜?」 なんて言いながら私の席まで来る彼 けれど少し顔が頬張っている気がした 「寝てた寝てた笑」 っていつも通り返事する私への返事もどこか上の空で違う何かを考えているような感じだった ダンベルでも入っているのかっていうぐらいやっと口を開いた彼は “333224*888” と書いた紙を無理やり渡し、 「この暗号解けたら返事ちょうだい!」 とだけ言い残して去る ポツンと取り残された私は真っ赤な顔をして走っていく彼の後ろ姿をじっと眺めた 聞いたことの無い暗号 検討もつかない暗号 でも、この暗号を解ければ彼の本当の気持ちがわかる そう信じて授業中も下校中も考えた そこで答えが分かるような甘い世界じゃなくて 大嫌いだけど、謎解き得意な姉にも協力してもらうことにした。 驚いた様な気まずい様な顔をする姉に紙を渡して一連の流れを説明すると 「ヒントは教えるから朝妃が解いて」 と言いながら明日提出の課題を進める姉 少しイラッとしたけれど教えて貰う立場なので気持ちをグッと堪えて 「ヒント教えて」 と尋ねる 姉は課題から目を離さないまま、自分のスマホで数字のキーボードを 私のスマホでひらがなのキーボードを見せる 何となく察しがついた私は姉にお礼を言いながら暗号を解く 解けた暗号の答えは「好きだよ」 そんなことあるわけないと何度謎解きをやり直しても暗号の答えは変わらないわけで これが現実だと分かった途端 自然と顔が赤くなり 彼の家へと走り出した 1度だけ来たことのある彼の家へ 彼の家のチャイムを押す手が震える 違ったらどうしようという不安が抑えきれない けど 彼へ私の気持ちを伝えくて仕方ない 「へ?朝妃どうしたの?」 驚いて目の真ん丸にしてこちらを見る彼へ勢いよく抱きつく 「私も好きっ」 ずっと伝えたかった 颯太くんが大好きで大好きで仕方ないってことを 照れて顔を赤くしたものの頭にハテナマークを乗せている彼 「暗号解けたよ」 「マジ?なんか照れくさいなあ笑」 「私も好きなのっ」 「じゃあ、付き合ってくれますか」 「もちろんです!」 その直後、2回目の2人の影が重なった * 大学の授業を左から右に垂れ流しながら 隣に座る彼へメールを送る 「私と海と電話」 「愛してる?」 「正解ー」 暗号から始まった君との出会い 暗号から始まる私の人生 彼が私でも解けない問題を作れるまで 彼と一緒にいたいです ││

4
9
暗号恋愛

この世界が嫌いな君へ

“ この世界で生きることになにか意味があるの? ” 元々根暗気味で人と接することが苦手な彼女はよく僕にそう呟いてきた でも1つのことに熱心になれる彼女が僕は大好きだった * 9月2日 金曜日 午後 3時40分 彼女の連絡先から電話がかかってきた 悲鳴のような泣き崩れた声で 「ビルの上から落ちた」だなんて彼女のお母さんが僕に電話してきた 多分、インドアの僕の一生より沢山走っただろう でも手遅れだった きっと “自殺の日”だなんて言われている 9月1日に落ちなかったのは彼女なりのこの世界への抵抗なんだろうと思う * 僕1人だけの部室 いつもの癖で彼女に話しかけたけど返事なんて勿論こない。 妙にシーンとした雰囲気が嫌で 僕は初めてその日部活をサボった * 彼女ぐらいしか話し相手がいなかった僕は突然、この世に自分1人だけ取り残されたような孤独感に襲われた 彼女は僕にとってとても大切な話し相手だった お母さんに頼まれたおつかいをしながら考える そういえば、あいつどんな写真撮っていたんだろう。 賞で彼女が受賞した作品しか見せてもらったことない 彼女にとっては人に見せるだなんてなんの意味があるのか、って感じなんだろうな 彼女のことを分かりすぎている自分が怖くて寂しくて 僕は効果抜群の睡眠薬を2粒飲んだ 当たり前のように自分のそばにいた人が居なくなるのが僕にとってはいちばん怖いかもしれなかった * 「カメラ?ごめんなさい、あの子沢山持ってるから…良ければ今度うちに来て探してくれない?」 「じゃあ土曜日にでもお伺いしますね」 無意識のうちに彼女の家へ電話していた。 「もし私が死んだら佐野くんが私のカメラ処分してね」 「え?写真集にすればいいじゃん」 「鈴木の写真は大ヒットするんじゃない?」 「それじゃ、噂が独り立ちしてるのと一緒じゃない」 「私のこのカメラの中身は私と佐野くんだけが知ってればいいの」 「ふーん」 わかったような分からないような彼女の言葉に僕は少し頭を悩ませた。 でも僕と彼女は違う そう言いきかせながら新しい紙に彼女の絵を描いた − 誰も知らないなら僕が絵として残せばいいんだ − そんな考えをしちゃうのもきっと中2だったからだろうな 「あ、あった」 「これ?あ、なんか手紙があるわね」 佐野くんへ なんかごめんねー 意外とロマンチストで語彙力豊かなで絵も上手い佐野くんはきっと小説家に向いてると思う いつか、佐野くんが描いたとびきり甘い恋愛小説読ませてね。 あとこっそり描いてた私の絵も見せてね 佐野くんってずっと私ばっかと居たからこれを機にクラスメートとも話してみるんだよ! 佐野くんならいける!ファイト!! 「佐野くん、悪いけどこのカメラ貰ってくれない?」 「僕が、ですか?」 「ええ」 「あの子、佐野くんと写真の話をする時が1番楽しいって言ってたしきっとあの子はこれを望んでいるから..」 「僕、あいつに言われたんです」 「私の写真は世の中に公開しないで」って。 「なんでそれでもいいなら僕が頂いてもいいですか」 「もちろん。ありがとうね」 そう言う彼女の母親に一礼し もう二度と来ることの無いこの家に背を向けた * “鈴木 写真集(個人)”と書かれたファイルを開く 彼女が撮った写真は色々だった 空 街並み 学校 カフェ 食べ物 そして、僕 いつ撮ってたかなんてわかんないけど、やっぱり全部素敵な写真だった その写真たちを見る度に ふと、 「彼女はまだ生きているのでは」 っていう錯覚に陥ってしまう まあそんなパラレルワールドがあるなら是非、紹介して欲しいものだよね 適当にお気に入りの小説を本棚から取り出す 中学に入りたての頃はしょっちゅう本を読んでいて小説家に憧れてたな なんて思いながらパラパラとページを適当にめくる ああ、この感覚が懐かしいな 自然とパズルをする時みたいに1つの自作小説が脳内で出来てくる それをパソコンに打ち込みさえすればあっという間に完成だ こんなに簡単だったか? いや、きっと彼女の温もりに触れたからアイデアが浮かぶんだな “やっぱり僕は小説が好きだ” そう思えば自然と足取りが軽くなった スクールバッグを埋めるほどの量の本を購入して帰る 彼女からの最後のお願いを叶えるために * 彼女との出会いはほんとに偶然の重なりだった 部活なんて人と話さない僕にとっては苦痛の時間でしか無かったからもうすぐ廃部になるという噂の美術部に入部した 案外、入ってみればごく普通の部屋で 部長ですらあまり来てないような緩すぎる部活だった 暇すぎて何か面白い事にチャレンジしたかった僕は “一周まわって毎日行ってやろう” だなんて言う意味のわからないことを考え出した 1日目 部長のみ 2日目 部長と副部長 そうやって記録しているうちに彼女に出会った なんだか 彼女に出会った瞬間、 懐かしい感覚に襲われた 「美術部の人?」 「いや、ごめん違う」 「え、誰」 「鈴木。部長の妹」 「よろしく」 「あ、佐野ですよろしくお願いします、」 「あ、もしかしてあの絵佐野くんが描いた絵?」 「まあ、はい、一応」 「ふーん。こんな人がねぇ」 「鈴木さんは、どうしてここへ?」 「あー図書室で勉強するような感覚。落ち着くんだよねここ」 そう言う彼女はこの世界に少し疲れているような素振りを見せ、背を向けパソコンを使用しだした きっとこれ以上は答えない。っていう合図なんだろうと思いキャンパスを開いた * 本を読むのはずっと大好きだった 親が文系同士だから本を読むことは教科書開くのと同じぐらい大切だ なんて教わってきたから暇さえあれば本を読む僕を周りは"根暗"と呼んだ 彼女は「ネタバレしてもいい?」とかおかしな事を言いながら隣の席で作品を書く 隣で作品を書いている彼女の温もりは今でも感じれそうな気がとてもする やっぱり、僕は彼女が大好きだ。 そんな大好きな彼女へ向けて、 ささやかな小説と似顔絵のプレゼントを__ * 「佐野ー!こっち!」 「田中久しぶり」 「おう!久しぶりだな〜!!」 「同窓会ってどのぐらいの人が来てんの?」 「あー、ほとんどのやつが来てると思う!」 「なんか楽しみだな笑」 「おう!飲もーぜ!」 「はいはい笑」 鈴木へ 元気ですか 僕はもう普通のサラリーマンになりました 相変わらず根暗だけど、 田中と今度食事に行くぐらいには頑張ったよ 凄いだろ〜??笑 鈴木が居なくなってから10年、みんなは忘れてきてるけど僕は忘れない。 きっと今思えばあのころの僕は友達としてじゃなくて、1人の女性として好きでした。 この世界が嫌いな君へ 君が嫌いな綺麗事だらけの鈴木が主人公な恋愛小説と 学生の頃書いてた絵をあげます 次、逢えたら感想聞かせてね * 「この世界で生きることになにか意味があるの?」 どこかで聞いた事のあるようなことを言う知らない女性。 なのに、なんだか懐かしくて 「会いたかった」 「へ…?」 「あ、すみません、」 「いえ、」 −− end −−

8
5
この世界が嫌いな君へ