ヘンゼルとグレーテル

大きな森のそばに、木こりの夫婦が住んでいた。二人の子どもがいて、兄はヘンゼル、妹はグレーテルと言った。夫婦とはいえ二人の本当の母はすでに死に、継母が代わりにいるだけだった。 夜。かまどの火はすっかり細くなり、部屋は闇に沈んでいた。外の風が板壁の隙間から吹き込み、赤子のような声で鳴いている。 木こりは椅子に座り、手を組みながら黙り込んでいた。足元の床板には、昼に拾ってきたわずかな薪の破片が散っている。 その向かい側で、その妻が夫を見つめていた。 「あなた、聞いているの?」 低く、切り出した声に、木こりはびくりと肩を揺らした。
さきち
さきち
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