毛糸の街

毛糸の街
 やっぱり苦い。いい歳して背伸びして買った生ビールは美味しいと思えなかった。  新幹線、生ビール、シウマイ弁当。私には合わなかったらしい。いつもそうだ。私は失敗しないと気が付かない。  唯一の趣味の編みぐるみ、その編みぐるみ関連の仲間とフォロワー四千人、彼氏と呼んでいいのか分からない八年付き合った上司、特に問題はなかった八年勤めた派遣先。手芸屋が近くにあった八年住んだ賃貸マンション。  その全てを手放して逃げるように去った。色とりどりの毛糸、使い込んだかぎ針、パーツに綿。全てゴミに出した。自信作の編みぐるみ達はメルカリで叩き売りをした。売上も全て寄付金にした。それから、派遣会社には退職願を出し、住み慣れたマンションを解約した。そして身ひとつになった今、特に行き先を決めていない新幹線に乗っている。  一つ嫌な事があると、全てを投げ出したくなるタチが爆発してしまった。良かったのかもしれない。これでやっとあの人の奥さんのインスタのアカウントも気にしなくて済む。元正社員だった奥さん。産まれる前からずっと知っていた二歳になる息子。公園で砂場あそび。オモチャが散らかった部屋。それに映り込んだ私の作った編みぐるみのクマ。  ねぇ、たくさんあるから持ち出してもバレないと思ったの?  ねぇ、奥さんになんて言って渡したの?
はるきち
はるきち
いいねやコメント失礼しますm(_ _)m 心身健康な時だと出来るのですが、最近読める時と読めない時の差が激しくて…_(:3 」∠)_ こんなやつですが、よろしくお願いいたします