見てほしかったとは思うよ

見てほしかったとは思うよ
 僕には嫌いな人がいる  僕は嫌いな人のやることなすことがすべて悪く見えるみたいだ  そいつは誰の影響か、つい最近詩を書いたのだよ  そいつは僕に嫌われていることに気づいていないみたいでね、詩を僕にも見せてきたんだ  僕はそいつの書いた詩がまるでつまらないと思った  表面では曖昧に相槌をうち、心の中ではこんなのをよく見せる気になったものだとバカにした  しかしね、そいつの書いた詩は美しいと評判だったのだよ  僕は正直腹が立ったね  だって嫌いなやつが書いたつまらない詩を皆が褒めているのだから
菱田龍彦