「ただの声」

「ただの声」
「その髪型可愛い」 「なにさっきの声、可愛いやん」 「スカート似合うじゃん」 「女子力高いなぁ」  これは“”普通“”の人にとって何気ない会話で、      きっと“”普通“”の女性からしたら嬉しい言葉なんだろうなと思いながら友達の声、表情、雰囲気に合わせながら会話する。僕にとっては毒でしかないこの言葉達は悪気なく、そして容赦なく僕のココロに傷を入れる。その傷達はもう増え過ぎてしまって、どの傷がいつ付いたかすら分からない。そのせいか正直言って、身も心も削れきれ始めている。じゃなきゃ、痛覚麻痺や、1人になった時にしか起きない吐き気と頭痛と過呼吸、嫌な思考……言い始めたらキリがないくらいの症状は出ないだろうから……でも、そんな状態でも大丈夫なフリを、なんともないフリをしなければいけない。人を傷つけてしまった僕にそんなことをしていい道理なんてないから。 助けてって言ったところで一時凌ぎにしかならないから。迷惑にしかならないから。周りに迷惑も不安もかけないために、見せないために息をするように、今日も嘘を吐く。 「大丈夫」 「今日も元気だよ」 「馬鹿だから風邪引かないんだ」 「今日の夕飯、楽しみだなぁ」
他人
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