扉は悪くない。①

カッカッカッと白いチョークに負けず劣らず白く、きめ細かい肌の長い指が石畳の上に容赦なく何かを描いていく。 素敵な庭が台無しだと弓月は子どものように地面にしゃがみ込む青年を見つめたまま、ココアをストローでちゅーと吸い上げる。 迷いなく動く白いチョークが描き出したのは、簡易的な扉の絵。 長方形と、中央左側に小さな丸。 それを囲うようにラテン語の筆記体が円を描く。 魔法陣にしては中央に座す扉の絵があんまりにも幼稚な絵に見えて、魔法陣というには些か違和感があると弓月は思った。 「よし、描けたよ」 勢いよく青年が立ち上がると、肩まで伸びた艶のある黒髪がフワリとスカートが舞うように広がって、すぐに重力で真っ直ぐに戻った。
渡邊三月。
渡邊三月。
気まぐれで拙い文章を書きます。気分で書く物(ジャンル)180°変わります。よろしくお願いします?更新かなりルーズ。いつもお読みいただきありがとうございます。