A

A
五月一日。僕はこの日、逃避行をした。 大阪の夜の街は、悪い大人達が闊歩している。母さんに、西成区にだけは行くなと散々止められていたけど、僕はそこに逃げ込んだ。居酒屋に飲んだくれが、大声で笑っている。プルオーバーのパーカーのフードを目深に被り、暗闇に向かって一直線に進む。 公園や路地裏、人通りの少ない所にはホームレスが沢山いる。 僕は若干の恐怖と不安を覚え、目を逸らした。 あいりん地区に入り、宿を探した。 「二〇八号室です、ごゆっくり。」 流石は西成区と言ったところか、年齢確認も、身分証明書も要らないで宿に泊まることが出来た。 二階の一番奥の部屋の鍵を開けて、部屋に入った。ベッドに腰を掛け、サイドテーブルに鍵を放り投げた。 これからどうしようか、と悩みながら、テレビをつけた。聞き慣れた、関西電気保安協会のCMが、不安定な心に平穏をもたらす。いつの間にか安堵の笑いが漏れていた。 《松本結城君、三歳は未だに見つかっておらず、警察は捜査を進めています。》
まる
まる
学生です。 思いついたのを文章化しているので、内容は浅いです。 マイペースに投稿するつもりなので、よろしくお願いします!