僕は夏の囚人

僕は夏の囚人
木造の無人駅を出ると、一直線にあぜ道が延びていた。 周りには何もない。田んぼが広がるだけだ。 照り付ける太陽を脳天で浴びながら、そのあぜ道をひたすら進んでいく。 拭う気にもなれないほどしつこく、全身から汗が吹き出る。Tシャツが背中に張り付いて気持ち悪い。せめて空気に触れさせたくて、背負っていたリュックを手で持つことにした。 昨日の夜、荷物を減らした甲斐があった。あの重さだったら、僕は多分、このだだっ広い田んぼのど真ん中に投げ捨てていただろう。 あぜ道の突き当たりは山だった。 赤い鳥居が、広がる木々を背にしてそびえ立っている。鳥居から先は、しばらく石の階段が延びている。 僕は一礼をしてから、その鳥居をくぐった。そして、階段を上った。 幸い、頭上を木々が覆うので、太陽の光を受けることはない。何もない田んぼの中を歩くよりマシかと思ったが、蝉の声が頭に響いてストレスに感じる。
御先稲荷
御先稲荷
自己満で執筆します。