第3話 それでも愛はない

第3話 それでも愛はない
俺の父親は性格が悪かった。 これは俺が身をもって感じたことなんかではなく祖父から聞いた話であった。 父は俺が幼い頃に他界しており、その理由は詳しくは聞いていないが、口っぷりから考えるに事故だったらしい。 俺がもっている父の記憶はほとんどなく、残っているわずかな記憶すらも曖昧で言葉にできるほどのものではなかった。だから俺の父への印象は全て祖父から聞いたものであった。 祖父は父のことを語る際、いつも必ず同じ導入をした。 "あいつは自己中心的で捻くれたとんだクズ男だった。でも悪いやつではなかったんだよ"と。 祖父は父に関して性格などの内面的なことは多く語ってくれたが、出来事などの具体的なことは一言も語ったことがなかった。 いくら父の性格の難を指摘したり、彼の言動をこき下ろしたり、人格を否定したり、非行を批判したりしていても、確かに祖父は父を愛していた。 決して本人がそう言ったわけではなかったが、口ぶりから察するにそうで間違いはなかった。 なぜ愛を込めて批判するのか、どうしても俺には理解ができなかった。
黒鼠シラ
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