暴れ女と旋風

 それは宛ら風の様で在ったと戦場から帰って来た父が静かに語った。 敵という敵を旋風の如く切り裂いていったと云ふその人は、自分と同年代の青年で在ったそうな。  その人が単身戦場を駆け抜け道を切り開いていったことで我が国は勝利を掴む事が出来たが、旋風のその人が敵であったらきっと我が国は負けていたであろうと淡々と語る父に、私はその人はどこの国にも属していないのか?と聞いた。  日銭を稼ぐ為に傭兵として戦場を駆ける者達の多くが国に属していないのを知っているが、そこまで腕の良い武士であれば何処かの国が勧誘していても可笑しくはない。  父は私の問いに是と答えた。 そして懐かしむ様にあの御人は金や女では釣れぬ気高い御人だと静かに静かに語るので在った。  そんな父が家臣の裏切りによって亡き者にされ、私は父を闇討ちした下手人として仕立て上げられ国から追われる身の上となった。  逃げ惑う道中、母も殺されてしまった。
ナナシ
今日も静かに生きてます。 prologue様にも出没し、極々たまに小説を投稿してます。