落書き

落書き
   とある家庭  煌びやかな婦人はグラスに葡萄酒を注ぎ、召使を見上げてゐる。洋卓には投げ散らかされた真珠と林檎。東の茶葉やみずみずしい果実の数々。床には腐れて蠅の集る羊肉、革靴で踏み破られた聖書。珠のような壁蝨をぶら下げた白猫。物乞いから奪った籠には鋭く光る剣が差し込まれている。天鵞絨椅子に腰掛ける夫の背後には見知らぬ女。今にも噛みつきそうな形相で此方を睨み、左手には短刀を持っている。外には吠える犬。巻き起こる嵐に荒れる港。魚を引き揚げる髭だらけの漁師は腕を振るって、網を引いてゆく。船を揺らす怪物のような波に踏ん張る。宵には月も雲に隠れ、ざあざあと雨が糞尿を流してゆく。悪臭漂う噴水前を少年が鼻を摘んで通って行った。宮殿前の門では犬が彷徨い、吠え声を上げている。婦人らはそれも知らず、ただ晩餐を楽しんでいる。街のどこかで起こる一揆にも呑気に、そして飢えた豚のように物を食い待っていた。    かの人々へ告ぐ  叫べ 平和の声を  方舟から飛び立つ鳩の背は  誰よりも勇敢で 誇らしい  その羽根を その嘴を
愛染明王
愛染明王
麒麟曰く「我草花を踏まず。獣虫を殺さず。世が平安なる時、街へ降り人の前に立つ」