#13

5年後。スパルジア帝国最西端。 街から遠く離れ、森のそばにひっそりと佇む廃墟にアルトはいた。 薄く陽の光を受け淡くオレンジを被ったその色は、もう埃の被った孤児院で見た夕焼けの記憶を思い出させた。 陽はすでに西に傾き、廃墟は陽の光から逃げるかのように影を伸ばしている。 すでに人の姿もなく崩れかけた廃墟の林立するこの村は、ただそこにあった。 もとは国境沿いで細く食い繋いでいた村だったのだろう。村の名前はここに入るときに偶然立て看板を見つけ知っていた。 「−サライズ村−」 五年間、アルトは放浪していた。道中は道に現れる獣を狩っていた。野営の仕方は故郷であったあの村を出て一月ほどで覚えていた。 街や村、たまにサライズ村と同じく荒廃した村を通り、ときには大森林を抜けてここへとたどり着いたのだった。
Zeruel
Zeruel
趣味の範囲で書きます。 また、才能があるわけではないので、馬鹿にされると言い返せなくて泣きます。 不定期投稿