はじまりは、きゅうり

はじまりは、きゅうり
 はじまりは、きゅうり。  お腹すいた〜、と言ったら、「じゃ、きゅうりでも食べるか」と言って、恋人のこうくんが出してくれたきゅうりを眺めながら思う。  クーラーが壊れて扇風機しか回っていない、このむしむしと暑い真夏の部屋の中、お皿の上の二本のきゅうりは元気に濃い緑につやつやとして、水に洗われていくぶん丸くなっているつぶつぶの棘は、まだつんつんと威勢良い。一口かじったら、ぼりっ、といい音がしそうだ。青い二本の線がぐるりと描かれたお皿の縁には、味噌が乗っている。きゅうりと、味噌。美味しい組み合わせだ。  そう、私たちのはじまりは、きゅうりだった。……私の中でだけだけど。  お待たせ、さ、食べよう食べよう。と、塩の小壷を持っていそいそと台所から出てきたこうくんに、おう、食べよう、と笑う。いただきまーす、と軽く手をあわせて、夏の香りをぷんぷんさせている、みごとに曲がったきゅうりを手に取りながら、私はそのことを思い出してふふ、と微笑んだ。  あれは、小五の夏。  小三からの付き合いのこうくんのおばあちゃん家の畳でごろごろしていた。こうくんは、冷蔵庫から冷やした麦茶をとりに台所に行っていていない。 「あー、あっつぅー。」
Tentomushi
Tentomushi
初めまして。Tentomushiと申します。 学生です。よろしく。