ラムネとサイダー

ラムネとサイダー
 ラムネとサイダーって何が違うの?  急に何を言い出すのか。隣に座ってるエマが問いかけてきた。右手にラムネ、僕の左手にはサイダーがある。 「味が…違うとか?」 彼女は反論する。ラムネとサイダーの成分表を見ればほとんど変わらないらしい。ではこれではどうだろう。出している会社が違う。これなら通るのではないか。しかしこれは否定された。ラムネ表記をしている会社はひとつではない。 「じゃあ、容器の違いとか」 あー、と彼女は言う。それ当たりかも。僕は少し良い気分になった。しかし彼女は良い顔をしていなかった。ラムネとサイダー、その区別が容器のみであることに不満を持っているようだ。僕は言う。 「そこまで嫌なことかな?」  彼女は言う。これはまるで、容姿だけで「君はこういう人だ!」「お前はこんなやつだ!」と言われる気になるのだと。中身は同じ、考えてることも同じ。なのに知名度や成り行きで、なんとなく違うもののように扱われる。そんなのは、少し悲しいことなのだと。  「…でもラムネもサイダーも美味い。」 形なんて関係ないよ、という意味で伝えたが彼女は納得していない。もちろん、僕自身も。ラムネかサイダー、どうとでも良いのかもしれないが、今の僕たちには結構大きな問題なのだ。
相満 撲
相満 撲
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