#約束

「……久しぶりだな」  騒がしい蝉の声が響き、項垂れる様な日光が降り注ぐ、雲一つ無い空の下、貴方は駅に姿を現した。  昔と変わらない穏やかな声。日焼けした肌と、適度に細い体。私はこの体が好きだった。引き締まった筋肉に抱かれ、愛を囁かれるのが、とても心地よかったから。  ーー約束通り、10年経ったわよ。ーー  私は微笑み、そう呟く。貴方はバツが悪そうに、俯いた。 「ごめん、実は俺、結婚してるんだ」  ううん、そんなに低い声で頑張らなくていい。私、知ってたの。貴方が他の人と一緒になった事。それに……。 「残念、私もよ」  君は、驚いた表情で顔を上げた。
三角ニカド
三角ニカド
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