ゆき

 歯車の音が夜を刻む。目を開けると椅子に座っていた。赤く、古めかしい、それでも重厚な椅子だった。椅子に座ったまま、窓の景色は動く。わたしはあくびをしながら、汽笛を聴いていた。  二人分の椅子に、わたしと新聞が座っている。わたしは新聞を手にとってみる。右上に、ちょっと小さく、千九百九十二年、七月五十五日。目をこする、目をこする。  わたしは新聞を開く。今度は左上。千九百九十二年、五月七百五日。右の手の人差し指と親指をまつ毛の付け根に押し当て、目をつむる。 ……おかしいぞ……。  ヘンな話は今までいくらでも聞いたことはあるが、まさか新聞までヘンになるとは知らなかった。下に目をすべらせ、一番大きな見出しを見る。   『完全な赤ん坊、この世に生つ』    赤ん坊の写真はなかった。代わりに小さな靴が二つ、置いてあった。靴の下には、『赤ん坊の生きを喜ぶ父親』と書いてある。赤ん坊が靴なのか、片方が父親で、もう片方が赤ん坊なのか、わからなかった。とりあえず、記事を読んだ。
かきあげ
かきあげ
バナナです