“卒業式”

卒業式の朝は、少しだけ世界が静かになる。 体育館へ向かう廊下の窓から、春の光が斜めに差し込んでいた。 床に伸びる光の帯を、俺はゆっくり跨いで歩く。 今日で、全部終わる。 三年間通ったこの校舎も、放課後に無意味に残った教室も、屋上の錆びたフェンスも。 全部「思い出」になる。 「……おはよ」 声がして振り向くと、そこにあいつが立っていた。 制服の襟は少し曲がっていて、ネクタイは相変わらず緩い。 髪も寝癖がついたままだ。
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
綺麗事が救いにならない夜の話。 正しさに置いていかれた感情と、 救われなかった青春の残骸。 優しい言葉ほど、いちばん痛い。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿