恋の行方

 俺は恋をしているのかもしれない、多分。いや、絶対している。うん、間違いなく。  でなければ、家から近くもないカフェにわざわざ何度も足を運んだりしない。  毎週日曜日の午後三時、そのカフェに行くと彼女はいる。「いらっしゃいませー」という声とともに彼女のにこやかな笑顔に迎えられると、それだけで一週間の疲れが吹き飛ぶ。  今日もそのカフェにやってきた俺は、一人席の端に腰掛け、店員である彼女にホットコーヒーとサンドウィッチを注文する。彼女が去っていき、いつものように鞄から取り出した読みかけの小説を開いた。  最近、ここのコーヒーを飲みながら、読書をするのが俺の習慣になりつつある。  ちなみに彼女の名前は古川さんというらしい。以前、彼女のネームプレートをみてそれを知った。古風で奥ゆかしさがあって、なんともかわいらしい名字だ。下の名前はなんだろうと想像するのが少し楽しくもある。  ……今これを読んでくれている読者諸君、ちょっと待ってくれ。違うんだ。いや、違くはないか。自分でも気持ち悪いことをしている自覚はあるが、決してストーカーなどではない。だから、俺の話を聞いてほしい。白い目で見ないくれ、頼むから。  彼女目当てにカフェに通うなどストーカーまがいの行為だろうとわかってはいる。だから、彼女の迷惑にならない程度に頻度は週一回に抑えているし、カフェでも静かに本を読んでいるだけだ。執拗な視線を彼女に送るわけでもなければ、連絡先を交換してどうにか繋がりたいなどという思いもない。  彼女と同じ空間にいて、癒されているだけなのである。  ただ、もうここに通い始めて一か月以上経つため、常連客として彼女に認知されているのでは、と淡い期待を抱いてしまっていることは事実だ。
葉月
初めまして、よろしくお願いします。 今、このプロフィールを読んでいるそこのあなた!どれか一つでも読んでいっていただけると幸いです。 いいねもコメントもめちゃくちゃ喜びます。ありがとうございます。