星屑のなる畑
あまり手入れの行き届かず、周囲に大した光源も見当たらない。荷台の星屑達は揺れに揺れ、天地が逆さになる様に、一回転してまた荷台に収まった。まだ星でないこの子らは、手を借りずして宙に浮くことは出来ない。これから採星場へと運ばれて、選別の後に星になる。大抵、ひとつの星は星屑二から三個程で生まれるが、時には非常に大きく、十を超える星もある。未だ宙を知らないこの子らは、一体どんな星になるのか。実に楽しみでしょうがない。
黒い岩を砕いてならし、そこに星の砂を混ぜ込めば、星屑畑の下地は完成だ。この星の砂は余った星屑を砕いて作る。そして、輝く礫をここに撒けば、後は星屑達を待つだけだ。大体、前に生まれた星が寝て起きる頃には、新しい星屑が顔を出す。そうすると、畑全体が緋色に輝き、とても温かくなる。そうして、新しい星屑達が生まれるのだ。
生まれてからは、しばらく熱が収まるまでその場に置かれ、光も収まる頃にやっと採集される。採集された時、必要な量から溢れると、その子らは砕かれて砂になる。それはとても悲しいけれど、新しい命になるのだから、私は畑を耕し続ける。今回も、また新しい子たちを見送った。
やっとして周囲が確認出来る程度の光源が現れた。揺れも収まり、心地の良いノイズだけが、しばらくその場を支配する。その静寂は、急激な停止に伴う慣性と、停止音に遮られた。道を遮断する停止看板に、夜行用の光が当たってキラキラと輝いている。今回も相変わず星採場前は通行止め。手馴れた手つきで向きを変え、荷台を解放した。星屑が摩れる乾いた音と、塵となって燃える光だけが、悲鳴のようにその場に残り続けた。
最近、畑作業をしていると、綺麗な朱色の流れ星が流れていく。畑作業の合間にそれを眺めて、また頑張る。そんなルーティンだ。きっと、星達が励ましてくれているんだろうと思うと、より頑張れる。最近は星達も代わり映えが無かったので、そのサプライズにはとても心を救われた。私ももう歳だ、畑は耕せても運ぶのには他の人の手を借りざるを得なくなった。本当は、育てた子達は自分の手で最後までしてあげたい。でも、こうやって育てた子達を眺めるだけでも、私は十分だ。
─ あぁ、次はどんな子達が生まれるのかなぁ。
2
閲覧数: 86
文字数: 939
カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/5/5 3:45
最終編集日時: 2025/5/8 10:27
じゃらねっこ
ねこじゃらしが好きなので、じゃらねっこです。