ある日の命

 あなたはある日、その火の中へ消えていった。  「またね。また会う日まで」  少女は訳もわからずその火を見つめている。火、青空、涙。人は何かを失って生きていく。代わりに何かを得ていく。  果てしない昼と夜を繰り返して。そうやって人は大きくなっていく。  此の世に呼ばれて、帰っていく。盛大に呼ばれても、静かに帰っていく。  少女もいつかはこの涙達に気付く時が来るだろう。知って欲しくない。だが知って欲しい。人ってものは素晴らしいのだから。  一人になった僕は、海に涙を返しに向かった。気付けば夜が更けて、どれだけ嗚咽を投げかけたか分からない。
宮浦 透 Miyaura Toru
宮浦 透 Miyaura Toru
みやうらとおるです。小説書いてます。興味を持ってくれた方はアルファポリスや公式LINEにて他の作品も見れます。