「いつか」の夏で。

朝。 敷布団から上体を起こして。 寝ぼけ眼で、頭も冴えきらない俺の目の前に、獅子舞サイズくらいの赤べこがいた。俺とそいつは今見つめ合っている状態だ。 背にある開け放たれた窓からは真夏の生ぬるい風が軽く吹き込み、窓枠にぶら下げられた小学生の頃の俺お手製の、不格好な風鈴をチリン。と一つ鳴らした。 六畳くらいの和室。よく歩くとこだけ傷んだ、けもの道ばりの褪せた畳。プリントが散乱し、シールだらけの汚ったない小学生からの勉強机。ばぁちゃんの部屋だった時からある褪せた焦げ茶のタンス、棚。 こいつの他に異変はないかと部屋を見回してみたが、何も変わらない。 当たり前に俺の部屋だった。
夜音。
よるの。