Midnight's kid

Midnight's kid
早朝のことを、真夜中の第二幕だと言う。真昼のことを、毛が生えた早朝だと言う。夕方だって、そんな真昼とニアイコールで繋がっているのだから事実上の早朝だと言い、だからこそ真夜中なのだと続ける。 つまるところ、一日中が霧に包まれた夢魔の世界なのだから、いつ売ったって同じだと結論付ける。 「そういう物だからね、これは」 誰に向けてということもなく、嶋日は呟く。キャラクターという枠組みを超え、最早インターフェイスそのものに話しかけているのかもしれない。被観測者としての責務をまっとうするに留まらず、読者が舞台世界を覗くための窓に、ブラックボックス・カラーのペンキをぶちまける。これはその種のお話であり、『そういう物』の本質がどのような物なのか、僕らはそれを知らずにこのお話の終わりを迎える。 『そういう物』とは、言ってしまえばああいう物であり、使用されるために存在している。爆散一歩手前のテレビジョンに使えば、画素数を数億倍に跳ね上げさせることができるし、人間が使えばあらゆる負の感情を取り除くことができる。車体に吹きかければかつてない馬力が約束され、しょっつる片手に地を闊歩する秋田県民にそれを見せれば好敵手になること間違いがない。 つまりはやはり『そういう物』であり、それ以外の名前があつらえられたことはない。強いて言うとしても発音の差がある程度の話で、それによる効果の半減が噂されているから、全人類に適した発音に属するよう変更される予定があるにはある。 嶋日はそれを売り歩いてる一個人に過ぎない。真夜中を主な拠点として、密売人よろしく人目から離れて活動している。齢十数にして天性の才覚を発揮しており、飛び抜けた詭弁と風格で得意先を確立している。イデオロギー内に点在する魅惑の果実のように、確かに彼は隠れながら生きている。 一部の人間、特に彼の親族からは倹約家として定評がある。
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