桜が咲かない春(3)

桜が咲かない春(3)
生徒が全員揃い、席に着いた。しんと静まり返った教室。 ただ鳥のさえずりとか、誰かが椅子を少し引いた音とか、車の通っている音が教室に響いていた。窓が換気のために少し空いていて、心地よい風が吹いてくる。 教室内のみんな、僕を含め緊張したぴーんとした空気で担任が入ってくるのを待った。 少しして、担任が入ってきた。「はじめまして!自分は|森真《もりまこと》って言います。今日から1年間1Aの担任として頑張ります!よろしくお願いします!」明るくて20代くらいの若い男の先生だった。彼は黒板に自分の字を書いて、自分は去年から先生になり、今年で2年目だと言う。去年は3年生の副担任だったそうで、担任を持つのは今年が初めてらしい。ずっと笑顔で、感じ良さそうだった。サッカー部の副顧問らしい。とは言ってもまだまだ研修が多く、毎日部活には行けていないのが悩みだと言う。 少し話しすぎた!と森先生は自分の説明を終え、俺たちは今後の流れの説明を受け、入学式の為体育館に向かう。 校歌が流れ生徒会長の挨拶が終わり校長の話は想像より短めに終わり、心の中でガッツポーズをしていると、生徒代表の挨拶になった。新入生代表の挨拶で呼ばれたのは川田さんだった。新入生代表になるのは、首席の子だとみんな知っているから名前を呼ばれ、立ち上がった彼女を、みんなが見ている。 そんな沢山の視線が自分に集まる中、彼女はその視線などで同様する様子や緊張する様子は無く、堂々としていて、それでいて凛としていた。彼女はさらっと新入生代表の挨拶をこなし、その姿がとても綺麗で、かっこよかった。 なんやかんやで入学式が終わり、夕聖と一緒に帰ることになった。 家からの最寄り駅が、俺の最寄り駅の2駅前でほぼ帰り道が一緒だった。「明日は入学テストだって森先生言ってたけど、俺まじで受験終わってからなんも勉強してねーわやばいかな」夕聖は少しも気にしていないというような顔をしながらそう言った。 「合格発表の日に配られたワークが出題範囲だって言ってたし、高校の基礎の範囲だからまぁ取れなくても、これから授業で分かるようになればいいんじゃね?」俺はスマホで、以前、テスト範囲の書かれた紙を撮った写真を探し出して、ほらと夕聖に見せながらそう返す。
にこ
にこ
『桜が咲かない春』 自分のペースで少しずつ書いていきます。何度も消したり書き直したりしていくと思います。