記憶屋・灯籠
「ようこそ、記憶屋・灯籠へ。御依頼は何でしょうか」
アンティーク調の店内。8畳くらいの少し狭いと感じる部屋に、ローテーブルを挟んで二人用のソファが二つ向かい合っている。私は入口に近い方に座り、向かいには一人の少年が座っていた。
彼のソファの後ろには窓があり、彼の綺麗な銀髪が、差し込む光でキラキラとしている。長ったらしい前髪の奥から、夏の空を思わせるかのような蒼い双眸がこちらを見つめている。日本人だとは思えない顔立ちに、私は少しの間見惚れていた。
しかし、特別だと思わせるようなところは顔立ちだけのようで、服のセンスはいたって普通の人だった。着心地良さそうな黒の長袖シャツにジーンズ。その上にはグレーのジップアップを着ていて、前のジッパーは開けている。服の上に夜空を閉じ込めたような首飾りをさげていた。
年はおそらくだけど大学生くらい。纏っている雰囲気はいい歳したバーテンダーのような、どこか落ち着いたものだ。そんなチグハグしている彼が、ここの店の経営者だという。
記憶屋・灯籠。〈死者との思い出、いかがですか〉というちょっと、いや、だいぶ変わったキャッチコピーを掲げている店だ。好奇心旺盛な人は気になってしまうかもしれないが、普通の人は怪訝な顔をするだけで、気にも留めないだろう。店内に入ってしまった私は、もう普通とは言い難い。
「ねえカナデ、アレどこにあるか知らない?」
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2023/2/3 1:04
矢来灯夜
初めまして、矢来灯夜(やらいとうや)と言います。小説、というよりも、何かを書くのが好きなので、アプリをインストールさせてもらいました。どうか、よろしくお願いします。