五十

 外れた木の上の男が叫んだ。枯れ葉の上に立っていて、ミミズを食べる口をしている。わたしは彼の手のひらに目をやって、こう言った。   「おーい、山はまだ秋だぞー」  男はギョッとした目でこちらをにらみ、ハートポイズンのアルバムをポケットから取り出す。それが見えたのが一瞬、わたしの左頬を通り過ぎたのが一瞬。プラスチックの長方形の箱は、コンクリートにぶつかってガタン、と品の悪い音を立てて壊れた。    左からまた別の男がやってきた。鼻が赤くてマントヒヒかと思った。木の枝をわたしに握らせてきて、頭の上から被った。木の枝を握りしめる音は、枯れ葉を踏み潰したあの男の鳴き声に似ていた。    コンクリートを踏み鳴らす。なぜかわたしのポケットにある有機野菜のにんじんが、生暖かいままであった。  ユーロビートをかき鳴らす男がひとり。街外れにある街灯の下、ただギターをかき鳴らすだけだった青年は、年を食うに連れて気味の悪い味を出していた。
かきあげ
かきあげ
バナナです