機織と宇宙の夜

機織と宇宙の夜
愛しのヨンネルくん、わたしが、短絡的な懊悩を回避できたのだと知ったとき、この世が綺麗事だけでは語れないと知りながら、それでも、なにか純潔で高尚な、きみだけの美しさを垣間見れたような心持ちがして、嬉しくなった。 きみをこの目で見るのは、時計の針を、美的観点から追うのと等しいものだった。物事を成す上で目的が粘着してくるのは、甚だ堪忍し難いものに違いないが、それですら、きみのためならば許せるのだと思う。だからわたしは、きみに美しさを覚える。 淡く美しい母胎から産み落とされ、その資質を遺憾なく身に覚えている。それは素晴らしいことである一方、度が過ぎてしまえばそれまでだ。過剰から破滅に陥り、不足からは虚無が生まれる。きみは無事中庸の海路にたどりつき、愛されるべき少年へ、その茎を伸ばしていく。わたしの翼がまだ一対あったころ、確かに見ていたように。 きみが言葉を拾い歩くのをよく見ていた。 粟粒ぐらいの活字を次から次へ拾い歩き、その文字に青い瞳を近づけて、鼻から匂いを嗅いで、口の中に放り込んで吟味した。芳醇な甘さを知ることがあれば、同様の頻度で、悲哀という渋味を知ったはずだから、おそらくは、何度も狼狽したことだろう。だが案ずることはない。その全てがきみの遍歴となって、いつか綺麗な月光のもと、あのお星様へと帰属するから。言葉は、天から賜った、淡雪のような清濁のかけらで、知覚が意味するのは、まぎれもない銀河への旅だからだ。積み重なっていく書物の群れは、流星群に違いないのだ。 だから、きみは良く成長した。 父母の愛、書物の聖水と毒。天の川に流れる星。辛い漢字と、卸した大根みたいなことわざ。なかなか上手くいかない世界は鞭となり、そして雨となり、香草の効いた刺激的な外界からきみを守ったその住処は、どうやってきみへの愛を謳うのだろうか。問いの答えは、頭上の暗黒の中で輝いている。
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面白い物を読ませてくれる人が好きです。 noteにもいます。 11.4 ~