キッチン

空気は凛としていて澄んでいる。 窓を開けると斜めごしに朝日が差し込んできた。「コーヒー飲む?」春美は隆に尋ねた。 「うん」と隆は短く答えた。 引き立ての豆の香ばしい匂いがとても心地よい。とりわけ何が足りないというわけではないが、この部屋には会話がない。 ペットボトルに水滴が残ったようにポツリポツリとだ。 春美はとても料理が上手い。隆も他人には言えないが春美は自慢の妻だ。 言葉数は少ないまでも今どきにない古風なところが好きだ。 春美は時々考える。隆は私のどこが好きで結婚したのだろう?
テディベア
テディベア
詩を長年書いてます。詩では銀色夏生さん。小説では江國香織さんが好きです。あまり固苦しくなく、気軽に読めるものが好きです。