走るなメロス

走るなメロス
一章  メロスは激怒した。必ずかの冷酷な組織からセリヌンティウスを守り通さねばと決意した。  シラクス市の空は、監視ドローンの光で昼も夜も曖昧だった。  この街では、人々が笑うときでさえ、視線の先にカメラがある。  A国とB国は長い冷戦状態にあり、互いの諜報員が都市の影を行き交っていた。  そして数日前、シラクス市内でB国のスパイ容疑をかけられた男が拘束された。セリヌンティウスだ。  彼はただの市民であり、教師であり、メロスの旧友だった。
June 4
June 4
大好きな作家は星新一と東野圭吾、小松左京です。 「多彩な想像力で、感嘆を」をスローガンに頑張ります。