25
ユウヤは早速O公園の東街通りに出て、探し出した電話BOXの中に入ると、一枚のテレフォンクラブの広告に記された電話番号に電話を発信した。わくわく桃飛沫、022-XXXX-◇◇◇◇と受話器の番号を押し打つ。発信音が狭いBOX内に鳴り響き、ユウヤは興奮して荒げる呼吸を落ち着ける。ガラス越しに街の人々が出かけて歩いていく様子を汗を垂らしながら見やる。真っ赤なジャケットに紺の丈の短いスカートを履いたハイヒールの茶髪のロングヘアの派手なメイクの女の片手に持つ鰐革のバッグや、眼鏡を掛けたサラリーマンの男の横を無邪気に走って駆け抜けていくランドセルを背負った子供達を見やる。しばらくして、ユウヤの受話器の元に受信が繋がる。もしもし、と相手の声が聞こえる。若い男の声だった。
「こちら、わくわく桃飛沫です。何かご用件でしょうか?」
「もしもし、あの、紹介して欲しい子がいるんですけど」
受話器を握る手に汗を感じながらユウヤは言う。
「この、金髪の畑中ハヅキっていう子を頼みたくて」
「分かりました。デリバリーをご所望ですか?」
あはい、そうですね、とユウヤはぎこちない息混じりの声で答える。
「送り先の場所はご自宅ですか、それともどの辺りを希望ですか?」
えっと、とユウヤはガラス越しの街並みに目線を向ける。真っ先に目に入ったのは、字体の崩れた店名のオシャレブランドの雰囲気のある服屋のシャッターの閉じた建物だった。そうですね、O公園の東街通りの入り口辺りでお願いします、とユウヤは言い、かしこまりました、少々お待ちください、と電話先の男が答え、では失礼します、と電話を切り会話を終了させる。
しばらくして、電話で指定した場所にタクシーが停まる。降りてきたのは、一言でいえばモデルのような若い女だった。見た目は二十代前半くらいで、ユウヤとそう歳は遠くないように感じる。白いクリーム色のブレザーを着て、ダークチェリーの丈の短いスカートとフェラガモの黒いローファーを履き、手首や指や首元や耳によく知らないブランド物のアクセサリー飾品を装っていた。肌は光るほど白く、ブリーチの完璧に仕上げた金髪のポニーテールを髪型にセットしている。メイクは濃目で、ブラッシュアップされた人形の顔のようにも見えた。彼女はユウヤが電話にて頼んだ、ヘルス嬢の畑中ハヅキだった。もちろん源氏名だろうが、ユウヤはなんとなくその名前が気に入った。わくわく桃飛沫とは、おもにテレフォンクラブを経営する風俗店らしいのだけど、そのほかにブルセラショップやソープ、現に目の前のヘルス嬢のハヅキといった風俗嬢達を配員するデリバリーヘルス等の多種な職種をまとめるその界隈では大手の企業らしかった。
0
閲覧数: 22
文字数: 5566
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/10/7 12:08
最終編集日時: 2025/10/9 13:02
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
アベノケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)