綾 前編

綾 前編
大学2年生の秋。私は恋をした。 図書館の静かな午後。窓から差し込む光が、本棚の影をやわらかく揺らしていた。私は席に腰を下ろし、ノートを開く。授業の課題を進めるつもりだった。 「あの…これ貴方のですか?」 「えっ?」 私より年上の眼鏡をかけた男性が私に消しゴムを差し出した。
Natume
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