自転

 あん時の気まずさったら、ない。  ギンガムの包装紙を飛び出し、ころころ転がるキャンディを追いかけて、勢い余って踏んづけた。上履きの裏の、バリっというかジャリっというか、砂を噛んだような後味の悪い音。  「わあ!可愛いキャンディ!食べたことのない味がする!」と珍しい海外旅行のお土産に沸いていた教室はお通夜のように静まった。そんな空気の中の謝罪の声はカスカスだった。 ともだちは笑いながら「いいよいいよ」と手を振って私を許した。 「あ、でも」  空の缶を私に向ける。 「さゆりちゃんの分、もうないや」   「ということがありまして、私は飴が苦手なのです」  いいつつ私は飴を噛む。
絵空こそら
絵空こそら
よろしくお願いします。