桜が咲かない春(4)

桜が咲かない春(4)
「おうーー!おはよー」大きな口で欠伸をしながら、夕聖が電車に乗ってきた。 「おはよ」夕聖の欠伸が|伝染《うつ》ったのか、挨拶を返してから俺も欠伸をした。 今日は4月12日。昨日入学テストが終わり、今日は新入生歓迎会。今日から1週間 部活動体験、いわゆる仮入部期間に入る。 「今日部活動体験だよな?一緒に行かね!てかもう今日から本入部でいいのにな」夕聖は口をニッとして、笑顔でそう言う。「それな」俺も夕聖も、学力的な部分もあったが、サッカー部が強いからここを選んだ。こんな言い方は良くないかもしれないけど、サッカー部以外入る気は無いから、俺もその案に賛成だった。 とりあえず新歓が終わったら、顧問に入部届け貰いに行こうという結論が出たところで、学校の最寄り駅に着いた。 駅から歩いていると、岩崎さんと川田さんが前を歩いているところが見えた。歩く速さ的に、俺達が追いつくのは明らかだった。俺は声をかけるか悩んでいると、夕聖が無邪気に声をかけた。「おっはよーっす」2人は少しびっくりした様子だったが「おはよう!ゆう…湯浅君!」岩崎さんが、はにかみながらそう返した。夕聖は、ゆう君でいいよ別にー!と明るく返した。幼なじみが仲がいいって漫画だけの世界じゃないんだ。俺は少し驚いていると、「おはよー元気だね、朝から」そう笑いながら川田さんが言う。入学式の時の、凛としたかっこいい感じではなくて、どこにでもいる女子高校生って感じだ。なんやかんや4人で教室に向かう。 そこから階段を登って4階まであがり、1番奥まで廊下を進めばA組に着く。 岩崎さんが席に着くなり、A組遠すぎだよ!ね!さつきちゃん!と机の上にほっぺをつけて、手をだらーんと下にした状態でいう。「それ!本当にこの教室遠い、、靴箱からほぼ対角線上だもん。」「え対角線上っていう発言がもうなんか頭いいんだけど」笑いながらそう言う岩崎さんに川田さんはそんな事ないわと、茶色のスクールバックから筆箱を出しながら、笑って返す。 「でもほんとに遠いよなー」机から身を乗り出して、夕聖が会話に入る。確かにこの教室は、学年の中で昇降口から1番遠い。ほんとに位置最悪だーという岩崎さんの後ろの窓から見える桜はとても美しく散っている。「…でもさ」俺が会話に入ろうとした時
にこ
にこ
『桜が咲かない春』 自分のペースで少しずつ書いていきます。何度も消したり書き直したりしていくと思います。