長生きできますように

長生きできますように
両脇の木が、苔むした石段の隙間に影を落としていた。一段一段足を踏み締めるたびに、記憶が引きずり出されるように、頭の中に浮かんでくる。 毎日のように甲高い笑い声が聞こえていた通学路が過ったところで、ランドセルの少年がふたり、楽しそうに石段を駆け登っていった。懐かしい顔つきに、僕は言葉を失う。 頂上まで止まることなく登っていく少年の背中を見送ってから、もう一度ひび割れた石段を踏みしめる。掘り起こされる記憶の輪郭をなぞる。 *** 「長生きできますように」 放課後の教室で七夕の願いを書いていると、松野が隣の席から覗き込んできた。僕は慌てて短冊を手で隠してから、松野を睨んでやる。 「勝手に読むなよ」 けたけた笑いながら自分の席に戻る彼は、頬杖をついてから、求めていない感想を言いはじめた。 「なんか、地味だな。もっとこう、夢あること書こうぜー」
川瀬 うそ
川瀬 うそ
初めまして、川瀬です。 どんな内容でも読んだ感想を共有して頂けると嬉しいです🙌 更新は気分次第です笑