透明

透明
 恐ろしいほど美しく澄み渡った、透明の水の底へ底へと落ちていく………  顔の両脇で、二つに結んだ長い黒髪が、水のゆらめきに合わせてゆらゆら踊った。  上へと向けられた二つの瞳は、水中を通して舞い込んでくる、たくさんの大小の虹色の泡玉と、小舟の黒っぽい影を、ぼんやりと見つめていた。  冷たくもなく、温かくもない、ぬるい水の中、その影へと手を伸ばしてみる。  五本の白い指の間から、眩しい太陽の光が差し込んで、顔の上で、ゆらゆら揺れた。  身体が、沈む。落ちて行く………緩やかに…ゆるゆる……  下へ下へと水を切って進む身体の重みの下で、押しのけられた水が、細かい泡を吐き出しながら、肌をなでていく。  心地いい。  恐怖は、感じない……
Tentomushi
Tentomushi
初めまして。Tentomushiと申します。 学生です。よろしく。