物覚え
「君ってさ、器用だよね」
何気ない、本当に何でもない一日の、何でもない昼下がり。これといった事柄も無く、平和な日常という名の幸せを謳歌する中で生まれた、ちょっとしたお話。これは、小さな小さな物語の幕開けを伝える言葉だった。
「私、結構忘れっぽいの」
スーパーの特売の日程だとか、お買い物での買い忘れだとか、学生時代は提出のプリントをよく忘れていた。そういう毎日の細々とした事柄を忘れてしまうから、結構怒られちゃったりもして、自分でもそれは自覚していた。だから、それを直そうと必死になって、沢山対策法を調べたりもした。そうしているうちに、調べるのが癖になって、色々なことを実践して、出来ることは自分でするのが当たり前になっていた。
「だからね」
林檎を切り分け、うさぎの耳を付け、お皿の上に綺麗に乗せて、食卓へ運ぶ。彼が着ているのは手編みのセーター。そういえば、誕生日には手編みのマフラーを送ったことをふと思い出した。二本の爪楊枝に互いが手を伸ばして、小さく触れる。そうしたら、彼の大きな手が私を求めるように包み込んで、気が付けばすっかり手を繋いでいた。まるで、愛猫を眺めるような愛しい彼の視線が少し恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/12/21 15:44
最終編集日時: 2025/12/23 12:55
じゃらねっこ
ねこじゃらしが好きなので、じゃらねっこです。