新しい色

 私が予想していたのは混沌と混乱。人間を人間たるものにならしめるのは理性である。動物的となった人間はもはや動物であり、人間と呼ぶには至らぬ存在へと落魄れる。食物連鎖とは混沌であり、弱肉強食は混乱である。混沌とした世界に見出されたたった1つの法則こそが食物連鎖であり、それに順応できぬ弱者は混乱に満ちながら理不尽なまでの仕打ちを受ける。この一連は馬鹿の所業であり、人間なる理性をもった生き物は辿ることのない道である。理性の欠如は致命的障害でありヒトをケモノへ引き摺り落とす。  私が今見ているのは理性の欠如。ケモノの世界の常識を知らぬ無知な新入りたちは、なすすべなく涙を流しながら通じぬ言語だけを頼りに狩尽くされる。これらは同族嫌悪の意識の強いヒトからすれば哀れむ他無い存在であり、都合よく操ることが可能である。人間のプライドは自身を守るためだけに存在している。このためにヒトはケモノに捕食されるほかなくなってしまう。  阿保を極めし出来損ないの人外は、死ぬか永久的に家畜としてケモノの人生を歩むかの選択肢が与えられない。一見彼らはヒトの落魄れと見做されるだろう。しかしそうでは無い。これは偏見と価値観の違いによって築かれた差別意識の極み。つまり彼らが劣るという考えこそが阿呆の所業であり、信じる者こそがヒトの落魄れである。そして彼らは野生の法則に飲まれて死ぬこととなると言える。  奴らは自分たちを無色透明な阿保と自負した。だから新しい色を蹴落とした。自分たちより賢明になりうる存在をヒトから落とした。これにより差別された者共は賢者となる機会を失い、奴らの思惑通りに家畜となった。それは身体の扱いの話ではなく、心の話である。奴らは互いを貶む前に他の色を貶めた。これがこの2色の進化を止めた。  私が予想していたのは混沌と混乱。  決して理性の欠如ではなかった。
ノラ戌
ノラ戌
黒鼠シラのサブです。 アイディア掴むための、行き当たりばったりな小説投稿する予定です。 ちゃんとしたのは黒鼠シラのアカウントで