【籠の中の鳥】

 世界を魔王の魔の手から救って、平和が訪れたと思っていた。みんなが幸せで暮らしていけると。――なのに、そうではなかった。  「もうどれくらい、ここにいるのかな……」  唯一の光が差す小さな窓を見上げながら呟いた。手を伸ばしても届かない。冷たい石畳の床に横になる。ひんやりと伝わる感覚に慣れてきたところだ。  自分自身は一体何をしたと言うのか。どうして、この狭くて冷たい牢屋に入れられているのだろうか?  何度問うてもわからない。何もわからない。  「ただ、世界を救っただけなのに。みんなの笑顔を守りたかっただけなのに……」
時雨 天